SOLIDWORKSユーザーイベントとして3年ぶりリアル開催
仏ダッソー・システムズ(以下、ダッソー)は2023年2月12日から4日間、テネシー州ナッシュビルで年次ユーザーイベント「3DEXPERIENCE World 2023」を開催した。同イベントは、同社が擁する3次元設計(3D CAD)/製造/解析ソリューションである「SOLIDWORKS」のユーザーを対象としたもので、2019年までは「SOLIDWORKS World」の名前で開催していた。リアルでの同イベント開催は3年ぶりとなる。
ダッソーによると現地でのイベント参加者は約4,100名、オンライン参加者を含め10,000名以上が参加したという。会期中は同社キーパーソンによる基調講演をはじめ、320以上の技術トレーニング、ユーザー同士の交流を図る30以上のミートアップセッションなどが設けられた。
今回のイベントでダッソーが強調したのは「コラボレーションの重要性」と「バーチャルツインの可能性」だ。
13日の基調講演に登壇したダッソーのエグゼクティブ・バイス・プレジデントで「3DEXPERIENCE Works」を統括するジャン・パオロ・バッシ氏は、2020年2月のイベント直後に新型コロナウイルスで世界中の活動が停止したことを挙げ、「われわれはお互いが(リアルで)つながり、最新情報を得られることがいかに重要かを理解した。反面、われわれの『3DEXPERIENCE Platform』で構築されたバーチャルワールド上では、緊急事態に対応するソリューションを素早く創造し、(社会に)貢献できた」と胸を張った。ダッソーでは2020年の早い段階で、医療従事者向けフェイスシールドの設計・開発を手掛けている。
「3DEXPERIENCE Platform」は、クラウドベースの製造業向け技術情報共有基盤である。自動ソフトウェアアップデート機能をはじめ、AI(人工知能)や機械学習、コラボレーション、スケジュール管理などを備える。さらに、ジェネレーティブデザイン機能や構造解析・流体力学・電磁場の総合作用をシミュレーションする機能、マーケティング・キャンペーンを実施できる機能も追加された。
現在、ダッソーは「プロダクト思考」から「エクスペリエンス(体験)思考」へと軸足を移し、3DEXPERIENCE Platformを核に、製造エコシステムの強化を図っている。設計・製造・開発・管理・サービス・マーケティングなどのソリューションと、それらが扱う情報・データを一元的管理し、ユーザー同士のコラボレーション作業を支援する戦略だ。
製造全般に携わるすべてのソリューションとユーザーを単一プラットフォーム上に集約することで、プロセスのサイロ化と非効率性を解消し、製品やサービスを短期間で市場に投入する。バッシ氏は「何かを創造する想像段階から、人とデータとソリューションを透過的なプラットフォームで結びつけられれば、新たな価値が創造できる」と、そのメリットを語る。
一方、コロナ禍とロシアによるウクライナ侵攻で、グローバルサプライチェーンは混乱し、大多数の製造業はマイナス影響を受けた。さらに製造先進国では、少子高齢化による熟練労働者不足にも直面している。原材費の不安定な相場や製造能力の不均衡な分布も問題を増幅させた。バッシ氏は「こうした環境で不可欠なのは、総合的なアプローチでビジネスを管理することだ。そのための解決策は、製造プロセスを可視化し、将来を予測できる技術だ」と力説する。