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週刊DBオンライン 谷川耕一

【ガートナー】データドリブン経営の3つのポイント「ビジネス価値、スモールチーム、生成系AI」

ガートナー アナリスト リタ・サラム氏インタビュー


 ビジネス上の意思決定をデータに基づいて行う「データドリブン経営」は広く知られるようになったが、一部の先進企業を除けば、データから得られる知見を効果的に経営に生かせていると自信を持って言える日本企業は少ない。一方、グローバルに目を向けると業界、業種を問わずデータを活用しビジネスモデルを変革している成功例が増えている。その成功のポイントは何か? ガートナーのアナリストリタ・サラム氏は、「ビジネス価値アウトカム」「スモールチームを持つ」「生成系AI活用」の3つを語った。

必要なのはテクノロジーではなくビジネスのアウトカム

ガートナー ディスティングイッシュト バイス プレジデント アナリスト リタ・サラム氏
ガートナー ディスティングイッシュト バイス プレジデント アナリスト リタ・サラム氏

 既にデータを活用して、企業内部のビジネスプロセスも外部向けのサービスも変革している「データアナリティクスの成功事例」は増えている。そう言うのは、ガートナー ディスティングイッシュト バイス プレジデント アナリストのリタ・サラム氏だ。

 1937年に創業した老舗の米国農業機械メーカーであるジョン・ディアでは、トラクターなど自社製品のユーザーにデータ活用が行えるアプリケーションを提供している。「トラクターのオーナーは、このアプリケーションを使ってデータを見て、いつメンテナンスが必要かの判断ができます」とサラム氏。

 これは、トラクターに搭載されているセンサーデータを活用するIoTのソリューションであり、トラクターという製品の販売だけでなく顧客への新たな価値提供に成功している例だ。このようなビジネス変革が、かなり古くからビジネスをしている製造業でも起きている。

 このように先端のデジタルネイティブなサービスを展開しているような企業でなくとも、データを使い変革している企業はある。「全ての分野で、同様のことが起きています。医療や製薬業の企業では、データを使ってPredictive Medicine(予測医学)や個別医療などを実現しています。他の業種でもデータを使い需要を予測し、サプライチェーンの最適化をしている例がたくさんあります」とサラム氏。金融サービスもデータ活用は盛んで、もちろんFacebookのような新しいデジタルサービスを展開する企業は、収益を上げるためにデータアナリティクスがなくてはならないものとなる。

出典:ガートナー [画像クリックで拡大]

 クラウドなどが普及し、必要なデータを取得してそれを分析する環境は比較的容易に揃えられるようになった。その環境を使ってデータを分析して、新たな知見を得られるようになったが、「ビジネスリーダーがそれを価値につなげるのは、まだ十分ではないところもあります」とサラム氏は指摘する。つまりテクノロジーのアウトカムがあっても、それがビジネスのアウトカムに昇華していないのだ。

 その理由の1つが、アナリティクスのリーダーがビジネスリーダーに対し、テクノロジーの範囲でしかデータから得られた価値を説明できないからだ。ビジネスの言葉で価値を説明できず、テクノロジーのアウトカムをビジネスのアウトカムに結びつけられないのだ。

 もう1つの課題は、データを分析して得られたアウトカムの話をする際に、どうしても目先のコスト削減などに終始しがちなことだ。本来目指すべきは、データを活用してビジネスを変革することだが、データ分析のために大きなIT投資をしたため、そのコストを早期に回収する費用対効果に拘ってしまうのだ。

 3つ目の理由もコストに関連するが、価値判断をROIだけで見てしまう点が挙げられる。多くの組織が、コスト効果だけを見て投資対象を決めがちだ。ブランド価値の向上や従業員満足度の向上、さらにはコスト削減には直接結びつかない生産性の向上など、データアナリティクスにより得られる価値はさまざまなものがある。それらは、ROIだけをKPIにして効果が計れるようなものではない。「これはデータアナリティクスに取り組むテクノロジーリーダーの課題と言うよりは、組織全体の課題と言えます」とサラム氏は言う。

 このような組織的な課題が、変革の実現を足踏みさせることにもなるが、やはりデータを分析して得られる価値をビジネス変革に結びつけることに対するデータアナリティクス・チームのテクノロジーリーダーの関与は大きなものがある。データを活用して企業に変革を起こすには、テクノロジーリーダーが経営に対する理解を深め、経営層にも分かりやすいようにデータアナリティクスの価値を説明できなければならない。

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アナリティクスのスモールチームを組織内に持つ

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

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