データ分析を原動力に、Hondaの事業変革へ
──最初にHONDAがDXを進める背景や目指す姿、Qlikの位置付けについて教えてください。
河合泰郎氏(以下、河合氏):HONDAは、お客様にとってナンバーワンの会社になることを目指しており、事業変革を背景としてDXを進めています。たとえば、従来のクルマづくりから、カーボンニュートラル時代に適応していくために、会社自身が変わらなければなりません。そのためには、企業運営を効率化することで、新しいクルマづくりへの原資を生み出していくという経営の狙いがあります。
もちろん、X=トランスフォーメーションなので、データだけでなくモノづくり、従業員の生産性、お客様との接点……と多面的に変革していく必要があります。
田中秀幸氏(以下、田中氏):2021年より経営重要課題として、本格的にデータ活用の取り組みを開始しました。DXを強化するにあたっていくつかのテーマを掲げており、データプラットフォーム構築はその一つです。また、現場のデータリテラシーを高める必要があり、「DX教育」も開始しました。教育の一環として、“BIツールをしっかり使えるように”ということでQlikを標準のBIツールとして定め、利用を促進する活動を続けてきました。
実は、Qlikそのものは標準ツールとして採用する以前からビックデータの分析において、一部社員が使用していました。当時はまだ利用者が少しずつ増えているという状況で、Qlikを中心に使うのではなく、あくまでも他のツールを併用していたのです。バラバラのBIツールによってデータ分析環境を構築するのではなく、しっかりと統一していこうという今の方針が定まっていきました。
──多くのBIツールがある中で、Qlikを標準とした理由はどこにあるのでしょうか。
河合氏:Qlikが「簡単にデータを統合できる」「セルフサービスで分析できる」という、2つの特徴を持っていたところが大きいです。
HondaにおけるBIツールは、単にデータをビジュアル化するのではなく、“分析をするためのツール”という位置付けです。そうした意味でQlikは、データを自分で取り込み、分析パターンを仕込んでいくという点で優れたツールだと評価しています。
──現在Qlikを使う社員は約7,000人とのことですが、どの部署がどういう形で使っているのでしょうか。
田中氏:Qlikを一番利用しているのは研究所です。以前から研究開発で使用していましたが、コネクテッドカーが普及するにつれて、ユーザーの使用状況などのデータが得られるようになりました。そこで、そうしたデータを分析してフィードバックすることで、現行車の課題を発見するなど開発に役立てています。
河合氏:製造工場でもIoT機器を整えているため、品質管理での利用も増えています。
自動車の製造工程はとても複雑です。シャーシやエンジン、ボディ、サスペンション……と組み合わせていき、各工程はIoT機器などでコントロールされています。そこから取得できるデータを時系列で分析するだけでもパターンが見えてきます。部品の位置や力のかけ方など、様々なデータをリアルタイムで収集してパターン分析することで、製造過程での品質管理に活用しています。これにより、アセンブリライン(組み立てライン)を止めるような状況になる前に、何らかのアクションを起こすことができます。
何かが起こってから状況を分析できても、事前に予測するまでには至っていませんでした。Qlikを利用したことで、根本的な原因が分かるようになったことは大きなメリットです。リアルタイムで情報を見ることができ、新たな価値を生んでいます。