
月間のログインユーザーID数(2023年3月末時点)が約5500万人にも及ぶ日本最大級のポータルサイトであるYahoo! JAPAN。同サイトを運営するヤフーでは、開発環境のモダナイゼーションを成功させるため、テクノロジー以外のレガシー部分に切り込む必要があったという。今後はLINEとの合併もあり、より洗練されたインフラ構築を目指している。同社が取り組むモダナイゼーションとはどういったものなのか。「EnetrpriseZine Day 2023 Summer」に登壇した、同社システム統括本部クラウドプラットフォーム本部長兼サイトオペレーション本部長の吉岡圭氏が解説した。
レガシーなシステムからの脱却とモダナイゼーションへの道
コロナ禍から、ようやく日常生活が戻りつつある。しかし、社会はそれ以前に戻ることはないようだ。ヤフーでは在宅ワークが基本となるなど、新しい生活様式へとシフトしている。また、直近ではLLM(大規模言語モデル:Large Language Models)が話題になるなど、テクノロジーの変遷は常にめまぐるしい。
ヤフーの吉岡氏は講演冒頭、同社がモダナイゼーションに取り組む背景から説明を始めた。VUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)と呼ばれる時代において、これからも事業危機に対応できるよう、迅速にビジネスを進めていく必要がある。そのためには変化に強い開発環境が欠かせない。また改善サイクルをスピーディに回していくためには、データドリブンなサービス開発が重要となる。

レガシーからの脱却にも取り組む必要がある。ヤフーはサービス開始から27年が過ぎ、2017年からモダナイゼーションに取り組んでいるものの、いまだレガシーな技術やドキュメントも残っている。レガシーをアップデートし、常に新しい環境を追い続けられる体制を作ることも欠かせない。
開発環境をモダナイゼーションするそもそもの目的は「事業成長への貢献」だ。吉岡氏は「コストを最小限に抑えながら案件の消化速度を高め、事業の成長に貢献し、利益の最大化を目指すことをゴールとして取り組みを進めて来ました」と説明する。
過去にも似たような取り組みはあった。たとえば、2013年にはアプリケーションライフサイクルマネジメントを目的として、パッケージのクリアオーナーシップや最新OSで動作することなどは実現できた。
しかし「継続がうまくいきませんでした」と吉岡氏は語る。背景には「他責のマインド」「古い標準による開発効率の低下」「負債が増える習慣」などがあるとして、今回のモダナイゼーションではこうしたテクノロジー以外のレガシー要因にも切り込むことにしたという。
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加山 恵美(カヤマ エミ)
EnterpriseZine/Security Online キュレーターフリーランスライター。茨城大学理学部卒。金融機関のシステム子会社でシステムエンジニアを経験した後にIT系のライターとして独立。エンジニア視点で記事を提供していきたい。EnterpriseZine/DB Online の取材・記事も担当しています。Webサイト:https://emiekayama.net
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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