2023年7月20日、アマゾン ウェブ サービス ジャパンは、中堅・中小企業向け事業戦略説明会を実施。7月20日が中小企業の日であり、同月が中小企業月間であることにあわせた開催となった。
会見冒頭、同社執行役員 広域事業統括本部 統括本部長 原田洋次氏は「中堅・中小企業を取り巻く環境は急速に変化しており、深刻な人手不足や物価高騰などに対応するためにも『DX』が求められている」と切り出した。IPA『DX白書2023』では、DXに取り組む大企業が94.1%と示されている一方で、中堅・中小規模の企業は40%ほどしか取り組めていないとされている。
そうした状況下、これまでも同社では中堅・中小企業向けのDX支援策を展開してきていたが、5つの項目にわたって強化策を新たに打ち出すという。
1つ目は、クラウド移行パッケージ「ITX Lite」であり、評価・準備・移行の3フェーズで支援していく。2つ目は、「ITX Lite」にも含まれている経営者向けの支援「デジタルイノベーション体験ワークショップ」として、Amazonが実際に取り組んでいる手法をベースとしながらソリューションとなり得るアイデアを創出していくという。
3つ目として「人材確保と育成」にフォーカスするといい、人材育成に関する推進メンバーの確保・育成に注力してDXをリードするコアメンバーを生み出していくとする。また、同社 技術統括本部 技術推進グループ 本部長の小林正人氏が「すべてのお客様に対して機械学習のメリットを届けていき、生成AIに関する技術にも長く取り組んできた」と4つ目の取り組みに言及すると、中小・中堅企業にも取り組みやすいサービスとして「Amazon Bedrock」などを挙げた。
そして、5つ目には「パートナー連携の強化」に注力していくとし、能力・専門性・実績に係る新たな認定プログラムを10月初旬に立ち上げることを目指していると明かす。
これら5つの項目を支える基盤となっているサポート施策について触れ、「伝統的な業界でパートナー企業と連携してDXに取り組まれている」と水を向けると、鶴見酒造 代表取締役社長 和田真輔氏が登壇。「酒蔵の件数は減少しており、後継者不足や清酒の国内消費減少などの課題に直面している」と語り始めた。
同社では、ラトックシステム社の酒造品温モニタリングシステム「もろみ日誌クラウド」を清酒造りの工程で活用しており、AWS上に蓄積されたデータをスマートフォンやPC画面で確認できるような環境を構築しているという。「グラフで可視化することで温度変化を“点”ではなく“線”で確認することができるようになり、醸造技術の大きな進歩だ」と和田氏。杜氏や蔵人(くらびと)が醸造期間中に蔵に住み込む、いわゆる寝ずの番だったが、24時間どこでも温度管理できるようになり泊まり込みによる勤務体系を無くすことができたと語る。
また、多くの従業員が同時に確認できるために技術継承にも寄与しており、将来的には温度経過のデータを活用し、より最適な酒造りに活かしていきたいとした。
説明会の最後に、原田氏は「中堅・中小企業に係る課題に対しては、サポートを強化ないしは新規追加して対応していく。鶴見酒造のような事例を増やすためにも、全国13都市でリアルイベント『デジタル社会実現ツアー 2023』の開催を予定しており、日本各地における社会課題解決、ビジネス活性化の加速を目指していく」と締めくくった。
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