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井無田仲と探る「変革のフロントライン」

弁護士ドットコム 橘大地×テックタッチ 井無田仲──「電子契約」を社会インフラに育てる

常にユーザーファーストで開拓を

 電子契約を利用する企業は増加の一途を辿り、2023年1月に7割を超えた(※1)。日本企業が実施する代表的なDX施策ともいえる電子契約の領域において、国内トップクラスのシェアを誇るのが弁護士ドットコム「クラウドサイン」だ。判子文化を一新し、電子契約を国内に普及させようとする同社の取り組みは、日本企業がDX推進で企業文化を変え、新規ビジネスを成功させるための学びの宝庫である。弁護士ドットコムは何を目指し、未来をどう変えようとしているのか。クラウドサイン事業を牽引する同社取締役  橘大地氏に、テックタッチ 代表取締役社長 井無田仲氏が話を聞いた。なお、本対談はテックタッチ代表取締役の井無田仲氏による、橘大地氏へのインタビュー形式で進められた。 (※1)『企業IT利活用動向調査2023』(日本情報経済社会推進協会とアイ・ティ・アールの共同調査、2023年1月調査)

市場に後発参入、最重視したのは「ユーザーベネフィット」

井無田仲氏(以下、井無田):サービス提供開始から7年足らずで日本に電子契約を根付かせ、「クラウドサイン」を国内トップシェアのサービスに成長されていますね。今日は、橘さんのビジネスにおけるビジョンはもちろん、成果が出るに至った、橘さんの信念も伺えればと思います。当初から橘さんは事業家になりたかったのですか。

橘大地氏(以下、橘):いえ、私は法曹一家で育ち、大学に入ってなんとなく弁護士資格を取った後に「自分でしかなし得ない仕事」をしたいと思ったのです。大手の弁護士事務所にサラリーマンとして入所しても夢が叶うことをイメージできず、「私たち世代の弁護士が成すべきことは何か」を考えていました。当時、“IT産業に特化した”弁護士がほぼいなかったため「スタートアップ領域の第一人者になろう」という思いで、少なかった企業法務部門を構えていたサイバーエージェントに入社したのです。

井無田:アントレプレナー(起業家)を目指されていたというよりは、「フロントランナー」を目指す手段がアントレプレナーであった、ということですね。おもしろいです。

橘:今でも「時代に求められる弁護士」としての役割を全うしている感覚が強いです。自分の存在で“差分が生まれない”仕事に、一度きりの人生を費やすことはもったいない。人生は有限だ、という切実な気持ちを持ちながら「後悔しない1年を生きよう」という思いの連続で年一年と生きています。

弁護士ドットコム 取締役 クラウドサイン事業本部長 橘大地氏
弁護士ドットコム 取締役 クラウドサイン事業本部長 橘大地氏

 サイバーエージェントで企業法務に携わった後、元々興味のあったスタートアップ企業支援に携わるために、2014年にGVA法律事務所に転職しました。スタートアップ企業を支援するために立ち上がった同事務所で経験を積むうちに「自分自身でもリーガルテックに関わる事業を創りたい」という思いが強くなり、弁護士ドットコムに転職したのです。

井無田:常に新たな環境で新たなチャレンジをされてきたわけですね。弁護士ドットコムに入社された2015年10月は、クラウドサイン事業が始まったのとほぼ同時期ですね。

文化を変え、DXを成功させるために何が必要か

橘:はい、事業が立ち上がったばかりでスタートアップのような環境でした。前職までは弁護士として勤務していたため、営業やマーケティング、製品開発など初めての経験ばかりで、試行錯誤の連続でした。それでも責任者として次々と決定を下す必要があり、司法試験の勉強をしていた時と同じくらい、毎日必死に働きました。

井無田:未経験の職務もそうですが、私たちテックタッチも今まさにシステム活用をアシストする「デジタルアダプションプラットフォーム(DAP)」という新領域でサービスを立ち上げて拡大させているところで、これまでにない概念を“文化として根付かせる”ことは並大抵の苦労ではないと思います。そうした似た環境下で、クラウドサインは「判子文化という日本の古い慣習を崩す」ことを理念に掲げ、先行していた電子契約サービスをおさえて国内トップシェアを確立されました。そこに至るまで、何が一番大変でしたか。

テックタッチ 代表取締役 井無田仲氏
テックタッチ 代表取締役 井無田仲氏

橘:当時を振り返ると、2001年に施行された電子署名法(電子署名及び認証業務に関する法律)によって、電子署名が手書きの署名や押印と同等に通用する法的基盤が整備された頃です。 まさに施行を皮切りに各企業が電子契約サービスをリリースしたときで、我々は最後発のサービスでした。

井無田:圧倒的に不利なスタートですね。

橘:実は、このとき最後発からのシェア獲得よりも、大きな挑戦をしたんですよ。

井無田:どういうことですか。

橘:当時の法律に則ると電子契約を利用する際でも煩雑な手続きが必要になり、使いにくかったのです。これではユーザーがついてこないと思い、私たちはこの電子署名法に敢えて準拠しない、ユーザーファーストのサービスをローンチしました。

井無田:それは最初にして最大の挑戦ですね。

橘:はい、ユーザーに選ばれるものこそが、その時代で一番求められるものだという信念の下でユーザーベネフィットを優先しました。この考え方は今でも変わっていません。その後2020年に内閣府、法務省、経済産業省の連名で「押印をしなくとも契約の効力に影響は生じない」と明記された通知が出されました。これを契機に、より安心してクラウドサインを利用いただけるようになったのです。

井無田:すごい、ユーザーの支持が社会を変える動きにつながったのですね。電子契約のトレンドを作ることができた今、感じている課題はありますか。

橘:「クラウドサイン」をローンチした2015年の時点の強みと現時点での強みは、まったく異なるものです。つまり、現時点での強みは3年後にほぼなくなるということ。我々の課題は、唯一無二の「強み」をいかに再生産し続けていくということです。当然ながら競争環境もあれば、個人ではなく組織として強みを再生産し続けられるような仕組みをスケーラブルに作っていく必要があります。クラウドサインは、顧客課題を解き続けられるサービスであり続けなければなりません。

 ありがたいことに今ではクラウドサインは国内トップシェアを獲得するほど認知されており、電子契約としてある程度普遍化されました。これからは、電子契約以外の付加価値をいかにつけていくか。たとえば、過去の紙の契約書や他社で結んだ電子契約も一元管理するプラットフォームや契約書のAIレビューにも参入し、それを1つのSaaS製品としてクラウドプラットフォームにしていくことを今は考えています。

井無田:それがワンストップでできるのならば、かなりユニークですね。

橘:今のところ、世界で1つです。電子契約のトップブランドとしては圧倒的に普及していますが、そこで進化を止めてはいけない。常にユーザーの要望を吸い上げ、それに追随していきます。今実現しようとしている紙契約の一元管理やAIレビューが実現すれば、当然3年後は違うチャレンジに挑むことになります。常に顧客のリアルな声を聞いて決定していくことこそが、クラウドサービスやSaaS提供者の目指すべき姿だと思います。

井無田:SaaSを提供している我々や、DXにより事業成長を目指している多くの企業にも、貴重な学びがあると感じました。電子契約は、日本で成功した代表的なDX推進の手立てだと思っています。紙の契約書の締結作業より断然便利になるため、日本企業の7割が使うインフラにまで成長した。成功の分かれ目は、「慣習を変えてでも使いたいと思わせるユニークさや便利さがあるか」なのですね。

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2030年でも、ITで次の「当たり前」を作るために

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この記事の著者

井無田 仲(イムタ ナカ)

テックタッチ株式会社 代表取締役慶應義塾大学法学部、コロンビア大学MBA卒
2003年から2011年までドイツ証券、新生銀行にて企業の資金調達/M&A助言業務に従事後、ユナイテッド社で事業責任者、米国子会社代表などを歴任し大規模サービスの開発・グロースなどを手がける。「ITリテラシーがいらなくなる...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

中釜 由起子(ナカガマ ユキコ)

テックタッチ株式会社 Head of PR中央大学法学部卒。2005年から2019年まで朝日新聞社で記者・新規事業担当、「telling,」創刊編集長などを務める。株式会社ジーニーで広報・ブランディング・マーケティング等の責任者を経て2023年にテックタッチへ。日本のDX推進をアシストするシステム利...

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