シリコンバレーの学生起業家に感銘を受け、情シスの道に
製造業におけるDXには、どのような特徴や可能性があるのか。三菱マテリアルは経営だけでDXを進めるのではなく、実施するテーマのアイデア出し、チームづくり、実行を「現場」で行えるように仕組み化を進めている。「DXの主役は全従業員です」と語る、同社 CIO 兼 戦略本社システム戦略部長の板野則弘氏に、テックタッチ代表取締役CEO 井無田仲氏が話を聞いた。
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井無田仲氏(以下、井無田):三菱マテリアルは「MMDX」[1]を掲げ、積極的にDXに取り組まれていますね。板野さんはシステム戦略部長として旗振りをする立場におられますが、元々IT部門の出身だったのでしょうか。
板野則弘氏(以下、板野):1989年に大手化学メーカーへ入社し、生産技術のエンジニアをしていました。その後、サンフランシスコに生産技術の拠点を立ち上げるため、1996年に渡米。まさにシリコンバレーのど真ん中に、およそ3年間駐在していました。帰国後は、情報システム部に異動して、ビジネスへのIT活用を推進しました。2021年に転職にて、三菱マテリアルのCIO兼システム戦略部長となり現在に至ります。
井無田:前職時代に、サンフランシスコから帰国してすぐ、情報システム部に異動されたのはなぜでしょうか。
板野:サンフランシスコに駐在していたとき、ITとビジネスの結びつきに強い興味を持ったからです。
シリコンバレーの中心部にはスタンフォード大学があり、その講堂で、学生がエンジェル投資家に自分のアイデアを熱くぶつけている姿を何度も見ていました。強烈に印象に残っているのは、失敗しても何度でもやり直し、挑戦する彼らの姿勢。こうやってベンチャーやスタートアップが生まれ、イノベーションを起こしていくのかと感銘を受けましたね。
挑戦する力やITがもたらすインパクトを化学メーカーにも持ち込めないかと考え、帰国後は経営陣に対してIT活用(Eビジネス)の提案を実施し、自分の意思で情報システム部に異動しました。
[1] 参考:三菱マテリアル『サステナビリティレポート』より、「DX戦略」