本稿では、まずクラウドに関して期待と不安の板ばさみになっている利用事業者の不安を整理する。その上で、大規模クラウド事業者の重圧を受けつつ、既存のサービス提供事業者がどのように付加価値を発揮していくべきかを考察する。
はじめに
「クラウド」は、GoogleのシュミットCEOにより提唱され、2008年以来、日本においても大きく取り上げられるようになった概念である。
「たった5分で利用可能な計算資源を1000倍にできる」「24時間で100年分の新聞記事をPDFに変換」といった華々しい事例が大きく紹介され、クラウドを用いることの恩恵が数多く語られた。「クラウドを使えば、いままでの常識では考えられないようなスケーラビリティが得られる」「導入コスト、メンテナンスコストは大幅に削減される。大規模な投資をする必要はなく、サービスを使った分だけ支払えばよい、要するにコストが減ります」といった調子である。
このような主張がGoogleやAmazon.comなど、当時の「勝ち組」企業の口から語られたのだ。「またもやバズワードなのでは…」という危惧を抱きつつも、多くの利用事業者は強い関心を抱いたことだろう。
それから、1年が経ち今に至る。クラウドは「よその国のサクセスストーリー」から「目の前の検討するべき業務課題」になりつつある。コスト削減や運用負荷の低減は魅力的ながらも、クラウドは本当に歓迎できるようなものなのか?ネットワークの「あちら側」に我が社の機密データを置いてしまってよいのだろうか? クラウドが検討の俎上に載せられるようになるにつれ、不安を訴える声を聞く頻度も高まっている。
本稿では、まずクラウドに関して期待と不安の板ばさみになっている利用事業者の不安を整理する。その上で、大規模クラウド事業者の重圧を受けつつ、既存のサービス提供事業者がどのように付加価値を発揮していくべきかを考察する。
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鈴木 良介(スズキ リョウスケ)
株式会社野村総合研究所 ICT・メディア産業コンサルティング部 主任コンサルタント2004年、株式会社野村総合研究所入社。以来、情報・通信業界に係る市場調査、コンサルティング、政策立案支援に従事。近年では、クラウドおよびビッグデータの効率的かつ安全な活用を検討している。近著に『 ビッグデータビジネスの時代』...
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