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『EnterpriseZine Press』

2024年秋号(EnterpriseZine Press 2024 Autumn)特集「生成AI時代に考える“真のDX人材育成”──『スキル策定』『実践』2つの観点で紐解く」

生成AIの社内導入で、情シスが押さえておきたい「4つの論点」

ベストプラクティスが確立していない「生成AIの社内導入」、今だからこそ問われる情シスの真価

【前編】生成AI導入にあたって情シスが留意すべき点とは

 直近の生成AIの台頭により、企業におけるAI開発・活用はその様相が大きく変わってきている。生成AIの社内導入黎明期において、他企業に先んじて競争優位性を獲得できるか否か、またその先の成長曲線を大きく描けるかは、情報システム部門の動き方や貢献が大きなカギを握る。そこで本稿では、情報システム部門変革の一助なることを目指し、生成AI黎明期において同部門に求められる役割を解説する。

日本企業“再浮上”の起爆剤として期待

 これまでもAIブームやビッグデータブームがあり、企業のDX推進の中でこれらを導入し、業務の課題解決に生かそうとする動きはあった。昨今の生成AIの企業導入へのトレンドにおいても、まずは情シスが「仕組み」として生成AIを活用できる基盤やITシステム的な環境を整えるといった動きを見せている。生成AIの勃興により、AI開発・活用に大きなパラダイムシフトが起きつつあるのだ。

 生成AIの導入に際しては、これまでのエンタープライズ企業の情シス部門の役割を改めて考え直すことが重要だと考える。日本企業は今、国際的に見ても生産性、競争力が低下し、企業価値が損なわれていると言わざるを得ない。これらの課題を解決するためにDXに取り組む企業も増えているが、生成AIはその起爆剤として大いに期待されている。経営や事業部門から「わが社も生成AIの活用を」と要請されている情シスも少なくないだろう。

 そこで、これまでと同様に「とりあえずベンダーを呼んで準備しよう」といったところにとどまっていては、本当の意味でのAI活用は実現しない。情シスにおいても、業務課題解決から事業変革までを視野に入れた、生成AIに対応したプロアクティブ(先見的)な取り組みが求められており、それがまさに企業の将来の浮沈を握っているのである。

生成AIはこれまでのAIと何が違うのか

 生成AIはこれまでのAIと何が異なるのか。まずは、企業におけるAI開発フェーズを「学習」と「推論」に分けて考えてみたい。

 AIは、過去の実績から様々な事象のパターンを学習し、そのパターンに基づいて将来を予測するものだ。AIに学習させるためには、まず、過去に起きた実績について、付随する状況も含めてデータを整理しておく必要がある。ところが日本企業はこのあたりは遅れており、データが紙の帳票類で保管されていたり、部門ごとにデータベースが異なったりといったことも少なくない。そのため、日本企業では「学習」においてサイロ化したデータをどのように集めるのか、どのように加工しAIにインプットできる状態(構造化データ)にするか、さらにその後、どのように機械学習モデルに学習させるのかといった点が大きなボトルネックとなっていた。

 しかし、生成AI開発においては、主にビッグテック企業による、事前に大量のデータを学習した「事前学習済みモデル」を利用することが主流になっている。これにより大量の学習データを企業が準備したり、モデルに学習させて精度検証など試行錯誤を行ったりする必要がなくなった。少量のデータでもそれを事前学習済みモデルに接続することによって、企業固有業務に対応する生成AIを構築することができるようになり、「価値」を生み出すAIを開発できるようになったのだ。まさに「業務品質に耐え得るAI開発の難易度」が大きく下がったと言える。

 「推論」においても、新しい概念が生まれている。「プロンプト」と「コンテクスト」だ。プロンプトは生成AIに対してどのような指示を出すか、コンテクストはどういったストーリーで聞くかということを示している。たとえばプロンプトは「あなたは優秀な弁護士です」「箇条書きで答えてください」といった尋ね方のテクニックを表しており、コンテクストは「Chain of thought(少しずつ聞く)」に代表されるように生成AIとのコミュニケーションのテクニックである。

 これまでは決められたタスクに対して、決められた対応をするAIが主流だった。その上、指示もプログラム言語によるものだったため、業務ユーザーは事前に準備されたバッチ処理やボタンといったインターフェースでしかAIに実行指示を出すことができなかった。一方、生成AIは汎用的なタスクに対応可能で、かつAIとの対話が「プロンプト(自然文による入力)」で行える。加えてそのアウトプットは人間が見ても違和感がない内容であるため、AIの民主化が急速に進んでいると言える。

 これまでのAI開発では「学習」における重要度、工数の比重が高い一方で、「推論」はその重要度を下げられていた。しかし生成AIでは「推論」が重要となり、どのようなユースケ―スがあり得るのか、どのように上手に適切に使ってもらうのかが論点の一つとして挙げられるようになった。

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生成AIの社内事例を作るための3手法

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この記事の著者

三善 心平(ミヨシ シンペイ)

PwCコンサルティング合同会社 執行役員 パートナー日系自動車メーカーで生産管理・経営企画などに携わった後、外資系統計解析会社を経て、2015年にPwCコンサルティングに入社。22年から現職。AI・機械学習をビジネスに活用する構想の策定、実証実験から仕組み化、人材育成などのプロジェクトに従事。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

上野 大地(ウエノ ダイチ)

PwCコンサルティング合同会社 マネージャー日系デジタルマーケティング企業を経て、2018年にPwCコンサルティングに入社。主にバックオフィス、コーポレート業務におけるAI戦略ならびにAIを活用した業務効率化、実装プロジェクトに従事。企画、PoC、開発、運用/保守まで一貫して支援している。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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