障害調査を丸投げも……。住友重機械工業の情シスは、分業で生まれた“無責任体質”にどう立ち向かうのか
オブザーバビリティを通した情シスのプレゼンス向上に挑戦
2023年9月13日、New Relic主催のコーポレートカンファレンス「FutureStack Tokyo 2023」が4年半ぶりに開催された。事例セッションには、住友重機械工業のICTインフラ戦略グループ グループリーダーの大越崇之氏、クラウドプラットフォームチーム チームリーダーの風間晋吾氏が登壇。同社は、情報システム部門におけるアプリチームとインフラチームのコミュニケーションを円滑にするべく、システムの監視画面をNew Relicで統一するプロジェクトを推し進めている。セッションでは、New Relic導入以前の監視運用における課題や、オブザーバビリティ導入の経緯、情シスのプレゼンス向上のための取り組みについて語られた。
950台のサーバーからMicrosoft 365の業務アプリまで管理
住友重機械工業は1934年に設立された機械メーカー。従業員数は2022年12月末時点で2万5000人を超え、売上高は同年12月期において8500億円以上にのぼる。
同社が提供する製品は、事業の⽅向性で4つのセグメントに分類されている。1つ目が「メカトロニクス」だ。オフィスビルなどに使用される減速機、モーターなどの製品を揃えている。2つ目は「インダストリアル マシナリー」。プラスチックを成型する機械や、スマートフォンに用いられる半導体の製造装置などを提供する。3つ目は「ロジスティックス&コンストラクション」。ショベル、クレーンなどの建設機械や省⼈化ニーズに対応した⾃動倉庫などの⾃動化設備を販売。そして4つ目が「エネルギー&ライフライン」。脱炭素・資源循環型社会の実現に向け、資源を有効活用した発電設備などのプラントシステムを提供している。

このように多岐にわたる製品・サービスを提供する同社のICT本部は、5つのグループで構成されている。そのうち、大越氏と風間氏が所属するのは「ICTインフラ戦略グループ」だ。

ICTインフラ戦略グループでは、グループ会社を含む社内システムのほか、外部の顧客が利用するシステムも守備範囲としており、主にハードウェア、ミドルウェア、Microsoft 365やMicrosoft Entra ID(旧 Azure Active Directory)などの業務アプリケーションを管理。数値で見ると、スイッチ・ルーター機器が3,000台、物理サーバーと仮想基盤がそれぞれ150台と200台、AWSサーバーは600台、業務アプリケーションは240個にも及ぶという。
サーバーのクラウド化で情シスのインフラチームも統合
サーバーについては、各拠点にあった物理サーバーを東京のデータセンターに集約。2011年にはVMwareによる仮想基盤の導⼊を経て、2020年の「クラウドファースト宣言」のもと、クラウドの利用を増やしてきた。その結果、社内の物理サーバーおよびオンプレミスの仮想サーバーの台数は右肩下がりとなり、AWSクラウドの台数が増加しているという。
このサーバー集約にあわせてインフラチームの体制も変更。以前は地区単位のチームの中にアプリチームとインフラチームのメンバーがそれぞれ在籍していた。地区ごとにアプリチーム、インフラチームが分断されていたため、協力体制を取りづらかったそうだ。そこで、サーバーを東京に集約したタイミングでこれらのインフラチームも東京に集めた。体制を強化した一方で、今度は地区ごとにチームが組まれたままのアプリチームと、東京に集約されたインフラチームが分断される結果となった。

一体化したインフラチームの中でもミドルウェア、OSごとで担当者が分かれ、分業化が進んでいた。これは、主にアプリケーションを運用している社内の統合APサーバーや統合DBサーバー、OS、それらのベースとなる仮想基盤やAWS基盤まで、広い範囲をカバーすることに起因しているという。監視画面も担当者ごとに用意することになり、結果として監視体制も統一化されていない状況に陥った。風間氏は「アプリチームのメンバーとインフラチームのメンバーの間に加え、インフラチームのメンバーの間でもお互いの業務を理解できていない」状況が生まれていたと指摘した。
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