「セールスフォースではなく他のクラウドベンダーを選んでいただいても問題ない」。「Welcom to the Real-Time Cloud」と題された2時間にわたる基調講演の冒頭、会場を埋め尽くす聴衆に向けて米国セールスフォース・ドットコムの会長兼CEOのマーク・ベニオフ氏が強調したのは「IT業界を変えることの重要性」だった。
ベニオフ氏は、企業を取り巻く状況を「厳しいビジネス環境を勝ち抜くため、企業は低コストでスピーディな新しいソリューションを求めている。しかし、現状はどうか。従来のエンタープライズソフトウェアがもたらす弊害により、停滞あるいは失速している企業は少なくない」と分析。SAP、Oracle、Microsoftといった大手ソフトウェアベンダーの名を挙げ、「彼らは古いビジネスモデルとテクノロジーを展開し続けている。例えば、ソフトウェアライセンスの22%にも及ぶ高額な保守料は、企業のイノベーションを阻害している」と批判した。
ベニオフ氏によれば、問題を解決するための鍵はクラウドコンピューティングにあるという。「ソフトウェアの大手3社が業界を支配しようとしている。このような状況を変えなければならない。それが業界を挙げてクラウドコンピューティングに取り組むということの意味だ。セールスフォースではなく、他のクラウドサービスを選んでいただいても構わない。私が伝えたいのは業界に変化の波を起こすことの重要性なのだ」(ベニオフ氏)
昨今のクラウドサービスの成長は企業が変化を求める証左に他ならないと同氏は見る。「10年前にはたったひとつのアイディアしかなかったが、現在では10億ドル以上を売り上げるソフトウェア企業に成長した。企業は変化を求めている。私はそれを手伝って、変化を起こし、独自性を育てたい。すでに多くの企業が新しいアイディアを使って、ビジネスに独自性をもたらすための動きを始めている」と訴えた。
以降、約2時間にわたって同社が提供する3つのクラウドサービス、すなわちCRMサービス「Sales Cloud」、コールセンター支援サービス「Service Cloud」、PaaS型サービス「Custom Cloud」についてプレゼンテーションが行なわれた。また、講演中は、セールスフォース「1/1/1モデル」で提携する障害者の就労支援NPO法人「札幌チャレンジド」代表の杉山逸子氏を皮切りに、エコポイント管理システムを手がけた経済産業省 商務情報政策局 情報経済課長の前田泰宏氏や、「mixiアプリ」の運用でSalseforce CRMの活用を発表した株式会社ミクシィ代表取締役の笠原健治氏らが次々と登壇し、ベニオフ氏と語らう一幕も見られた。午後からは20を超えるセッションが催され、会場は多くの参加者でにぎわった。