金融サービス業界における生成AI活用のトレンド
アマゾン ウェブ サービス ジャパン(以降、AWS ジャパン)は2021年から金融サービス業界に特化したビジネス戦略として「Vision 2025」を推進してきた。この戦略の背景にあるのは、「インフラの提供ではなく、ビジネス変革を支援したい」という思いである。他の業界と同様に、金融サービス業界もまた外部環境の変化の波にさらされており、ビジネス変革を急務としている。
これを踏まえて、AWSはVision 2025で「既存の枠組みを超えたビジネスモデルへの挑戦」「新生活様式を織り込んだ顧客との関係構築」「予測できない未来に耐えうる回復力の獲得」「変革を実現する組織と人材の育成」の4つの領域のサポートに注力している。
アマゾン ウェブ サービス ジャパンの金融事業開発本部長である飯田哲夫氏は、「顧客の生成AIの活用支援でもこの4つの領域に注力すると同時に、社内業務における生産性向上のニーズにも対応したい」と語る。
そして、現時点の代表的なユースケースの傾向として飯田氏が挙げたのが、「顧客対応の分野」と「不正取引検知の分野」の2つである。まず、前者については、コールセンター業務の運用支援やチャットボットの適用に関心が集まっている。そして、後者については、金融犯罪の手口の高度化を背景に、セキュリティ対策の一環として検証を急ぐ例が増えているようだ。
その代表例がロンドンを本拠とするリテール金融のNational Westminster Bank(略称:NatWest)になる。同行は、高度化する金融犯罪への脅威に対応するため、Amazon Bedrock(詳細は後述)の活用を進めている。また、新興企業の銘柄を扱う米大手証券取引所のNasdaqでも、Amazon Bedrockを活用し、金融犯罪対策、サーベイランスの強化に取り組み始めているのだ。