Autodeskは米ネバダ州ラスベガスで開催されたイベント「Autodesk University 2023」(以下、AU 2023)で、新製品「Autodesk AI」を発表した。
同社は、3D CADをはじめ、建設設計や施工などの管理システム、設計データを3次元化して管理する「BIM」(Building Information Modeling)などを手掛ける。建設業向けの「Forma」、製造業向けの「Fusion」、メディア・エンターテインメント業向けの「Flow」の分野でのクラウド製品群を提供している。
オートデスクの現プレジデント兼CEOであるアンドリュー・アナグノスト(Andrew Anagnost)氏は、ジェネラルセッションでの新製品「Autodesk AI」の発表について次のように述べた。
「長らくAIの開発に取り組んできたが、今回の生成AIの技術により機能を強化し、設計・製造、デザインに関わるプラットフォーム上でのすべてのAutodesk製品に組み込むことにした。創造性を解放し、問題解決に役立て、建築設計・製造業界の非生産的な作業を排除することを目指す」(アナグノストCEO)
Autodesk AIでは、生成AIによるプロジェクト文書や図面の自動化、設計データからツールパスの作成、建設環境の各プロジェクトに関する情報提供のための機械学習、メディア制作のスケジューリング、絵コンテに基づくCG動画生成の機能により、設計・開発者、デザイナーなどの業務を支援する。
また、製造系ソリューション「Fusion」やBIMツールである「Revit」はAutodesk AIとの連携により機能が大幅に強化される。同社のバイス・プレジデントであるJeff Kinder氏は、EVメーカー企業の新興電気自動車(EV)メーカーのリヴィアン・オートモーティブ(Rivian Automotive)の導入例の設計・製造を紹介。同社では既に「Fusion」や「Revit」、VRやARによる設計デザインによる開発の他、Autodesk Construction Cloud(ACC)上の活用を進めてきた。今後はAutodesk AIの活用により「100年に1度の自動車産業の変革」の中でさらに飛躍が期待できるという。
ゲームや映画のエンターテイメント分野におけるFlowでのCG制作に関するAIの活用については、Autodesk製品によるワークフローが導入されている例として、マーベル・スタジオの活用事例が紹介された。CG制作現場で、コンテンツデータの共有や同時アクセスが可能となり、相互運用性が生産性を向上させることが強調された。
また、新たな発表として、半導体システム設計に関するCadence Design Systemsとの提携、進行中のカリフォルニア州の住宅問題解決を目指す「フェニックス・プロジェクト」などが紹介された。会場では、キノコによる菌糸断熱材を使用した3D設計と、その実物建築も展示された。
「AIとデザイン、創造のプラットフォーム」をテーマに、11月13日から4日間にわたりラスベガスで開催されたこのイベントでは、建築、製造・エンジニアリング、メディア・エンターテインメント分野のテクノロジーに関する講演やチュートリアル、パネルディスカッションなどのセッションが600以上行われる。参加者の数は1万人規模となる。