万全を尽くしても人智の及ばない出来事は起こりえます。そんなときのために「コンティンジェンシープラン」の準備が必要なのです。
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コンティンジェンシーとは

「コンティンジェンシー」とは耳慣れない言葉ですね。しかし、コンティンジェンシーをGoogleで検索すると51500件、ヤフーで検索すると14000件ヒットします(2007年8月22日)。ビジネスの世界では既に一般的に使われている言葉です。英語で書くと、contingencyとなります。
電子辞書(大修館書店ジーニアス英和辞典)で調べますと、
- (予期せぬことが起こる)偶然(性)
- (未来に起こりうる)偶然のこと;予期される緊急事態;不慮の出来事(accident);(事件に伴う)付随事故;
とあります。
我々がシステム開発を進める時は、あらゆる局面で人智を集め、常に万全を尽くすことが基本動作なのですが、それでも人智の及ばない出来事はおこります。残念ながらシステム開発は、未だそれを進める人間の能力を超えた品質を、プロジェクト推進にも、プロダクト製作においても実現できていないのです。
しかし、システム開発を進めるにあたって、開発開始から本番運用開始まで、あらゆる局面において何がおこるかわからないからといって、思いつく限りの事態に対し計画を策定していたのではシステム開発どころではなくなってしまいます。辞書にあるとおり、「予期される緊急事態」に対し効率的にプランを策定しなければなりません。これは、通常、開発に伴うリスク対応として管理されます。最近、リスクベースドマネジメントなどという言葉がはやっていますが、常識の範囲でリスクを洗い出し、妥当で適切な対策をとるわけです。
さて、このように、リスク管理を行った上で、なおかつ、特別に括りだして、予期せぬ(予期したくない)トラブルに対しコンティンジェンシープランを策定しなければいけないのが、システムが完成し本番稼動する時です。言うまでもなく、システム開発において、出来上がったシステムがうまく動かない事態が最も高い確率でおこるのが、本番稼動を始めた時だからです。
一般的に、サービスインしたシステムの不具合で業務開始がうまくいかなかった時に備えては、いくつかの対策がとられます。業務によっては止められるものもありますし、延期出来るものもあります。そういうことが出来る場合は当然、計画には組み込みます。もちろんこれも、コンティンジェンシープランです。どこの会社でも、このレベルでの計画は一般的に作られているのではないかと思います。
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菊島 靖弘(キクシマ ヤスヒロ)
独立行政法人 情報処理推進機構 ソフトウェア・エンジニアリング・センター(SEC) リサーチフェロー。1975年東京海上火災保険に入社。以来30年間、損害保険、生命保険、確定拠出年金といった業務システムの開発に携わった他、東京海上日動システムズ取締役品質管理部長として、トラブル削減や、開発品質管理の向上を実...
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