開発、テストがうまく行き、いざ本番!というところで、単純なヒューマンエラーが重大なトラブルを引き起こすことがあります。今回は、これを防ぐにはどうしたらいいかについてお話します。
本番移行の作業がヒューマンエラーを誘発

この30年システム開発の仕事をしていて、随分開発のための道具は進んできたと実感して
います。しかし、肝心なところはどうしても人に頼った運用になっていて、人に頼っているところはどうしてもトラブル原因の発生場所になってしまいます。システム開発において作成・修正したプログラム類の本番移行等の作業もまた、ヒューマンエラーを誘発する、トラブル発生の温床になっています。
「トラブル削減のための原則 第拾壱条」で大規模開発の場合17%、小規模開発では実に63%で、「本番移行」に係る人間系手続き的作業がトラブル発生の原因になっていると報告しました。作ったシステムを本番稼動させる、そのためには、作ったプログラムを本番用プログラムライブラリーに入れなくてはなりません。作業で使うデータベースや、ファイルも本番環境に定義しなければなりません。
こういった作業は、作業ツールこそ近代化しましたが、今日においても、対象情報を人間が管理して、反映も指示書作成など人間系の手作業に負っています。その結果、
- うっかり(勘違い)
- すっかり(任せっぱなし)
- さっぱり(忘れる)
- そっくり(取り違える)
といった人間なら誰でも犯すミスと無縁ではいられないのです。
長い時間かけて、数百本のプログラムを新設、修正し、テストを山のように行い、日夜検証し、さあ本番! 本番初日の作業がノーマルエンドして、さてお祝い…と、飲みに行こうとする頃、「エントリーされたデータから作られた他システム伝送データの中の数字がおかしい、新しい商品の数字が入ってくるはずなのに、その分がカウントされていないようだ」などという携帯電話が入ってくるわけです。さあ…徹夜です。しかし、身内の間でその日に発覚するようなら、まだ症状は軽く、お客様にお送りした作成物について誤りがあり、送った後おかしいといわれるような事態になったら…数ヶ月は対応に追いまくられることになりかねません。
原因追求をすると、トラブルの直接の原因は、たった1本の修正プログラムについて本番登録が漏れ、本番作業では修正前の同一名プログラムが動いてしまった…といったことであったりします。
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- 開発担当者必携!トラブル削減のための原則拾七ヶ条連載記事一覧
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- 【拾七】それでもおこってしまったらすみやかに報告を。
- 【拾六】サービスイン(カットオーバー)時には必ず本番チェックを実施する。
- 【拾伍】プログラム類の本番移行管理は確実に行う。
- この記事の著者
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菊島 靖弘(キクシマ ヤスヒロ)
独立行政法人 情報処理推進機構 ソフトウェア・エンジニアリング・センター(SEC) リサーチフェロー。1975年東京海上火災保険に入社。以来30年間、損害保険、生命保険、確定拠出年金といった業務システムの開発に携わった他、東京海上日動システムズ取締役品質管理部長として、トラブル削減や、開発品質管理の向上を実...
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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