金融商品取引法の施行にあわせて、日本でも導入された内部統制報告書制度。2009年度は制度導入後最初の報告書の提出年度となり、3月決算が集中する日本の上場企業においては、この6月が提出期限だった。その提出状況や今後の取り組みについて、金融庁総務企画局 企業開示課 企業会計調査官 野村昭文氏が講演を行った。
2065社が「内部統制は有効」と報告

野村氏は、まず、内部統制報告書は、上場企業の会計年度末から3カ月以内に、有価証券報告書とともに提出しなければならないものであり、6月の提出期限までに出された報告書の状況について、金融庁は7月7日にその内容を公表していると説明した。財務省や金融庁では、企業から提出された報告書や書類について、その内容や状況などを報告することはあまりないが、制度導入1年目であり最初の提出となる内部統制報告書については実施状況を含め公開することに意義があるとの判断からだ。
日本の上場企業はおよそ3,800社あるといわれ、そのうち3月を会計年度末としている企業は2,656社となっている。これが、今回の内部統制報告書を提出義務がある企業の総数となる。このうち6月末までの提出期限に報告書を提出した企業は2,653社だったそうだ。3社が提出していないことになるが、この3社は有価証券報告書も未提出とのことだ。また、提出義務のない非上場の企業でも任意で報告書を提出するとができるが、この任意提出の企業は17社あったそうだ。任意提出の企業は、地方銀行など非上場ながら、取引先、関連企業に対して内部統制の実施について報告、公開する意義を評価しての提出と覆われると分析した。
最終的に2,670社が2009年6月までに内部統制報告書を提出したことになる。そして、報告書の「評価結果」の記載状況、つまり内部統制の実施評価について問題がなかった企業、問題があったとした企業がどれくらいかの内訳についての説明に入った。「内部統制は有効である」と答えた企業は2,605社。全提出企業の97.6%が内部統制に問題がなかったと報告している。「重大な欠陥があり内部統制は有効でない」と答えた企業は56社あった。
全体のおよそ2.1%は財務処理や決算処理の修正、子会社や関連企業での不備などが確認されたという結果だ。また、9社(構成比で0.3%)が「内部統制の評価結果を表明できない」とした。この意見不表明は、本来、決算直前に子会社の買収が発生したなどやむを得ない理由に対して適用すべきものなのだが、実際には内部統制を実施していない、整備していないという企業が含まれている可能性もあるという。これは、制度実施最初の報告書提出ということもあり、今後の周知や指導が必要だろうとのことだ。
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EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)
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