日本でも国際会計基準が導入されようとしている。国際会計基準(正しくは国際財務報告書基準)では、日本や欧米のとっていた細則主義(ルールベース)から原則主義(プリンシパルベース)に変わるという点が注目されている。原則主義の財務報告において、今後の財務担当者や経営者、監査人に求められるスキルはどんなものだろうか。また、現状制度における日本の課題はなんだろうか。青山学院大学 八田進二教授は「国際的統一が進む市場の課題ー原則主義の実質を考える」と題して、新しい制度に対する日本の課題、求められる会計報告基準についてスピーチを行った。
日本における国際会計基準対応 7つの誤算
会計プロフェッション研究科教授 八田進二氏

金融庁によれば、日本の国際会計基準は2012年までに任意運用を行い、そこで強制適用するかどうかの判断をすることになっているが、八田教授によれば、この流れはじつは1973年のヨーロッパから始まっており、米国も追従しつつある現在、導入される可能性は高いという。国際会計基準において、日本と米国はそれぞれの国内事情その他により、これまでは後手に回っているか、むしろ逆行するかのような独自路線を維持していた。30年も前からあった動きに対して、このような対応をしていたのは、ひとえに日米は経済大国であるという自負とおごりがあったのだろうと教授は分析する。
とくに日本においては、国際会計基準30年間の節目節目において重要な関心を払ってこなかった。その節目ごとに7つの誤算があったとのではないかと八田教授はかんがえている。まず、1973年に先進主要国の9カ国の会計の専門家が集まり国際会計基準委員会(IASC)が組織された。ここで、異なる国の会計報告をどのように評価するかその指針などが話し合われるようになったが、当時は民間の専門家による民間の組織であり、80年代、90年代の日米はそれほど関心を払っていなかった。ここまではよいとしても、2000年5月、オーストラリアで開催された証券監督者国際機構(IOSCO)が、IASCの会計基準を指示すると表明した。日本はこのときバブル経済崩壊後の金融・会計ビッグバンの真っ只中であり、それどころではなく、結果的にこの国際的な節目を見逃すことになった。これが第1の誤算だという。
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EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)
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