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【DX推進事例】日本のDX推進企業10選

 日本には、既にDXにおいて一定の成果を出している企業があります。日本のDX推進事例として、経済産業省の「DX銘柄2023」に選定された10社を紹介します。

日本のDX推進企業10選

 IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が発行する『DX白書2023』によると、日本でDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組む企業は、2022年度では約7割に上っています。これからDXを進める企業には、事例を参考にしたい人も多いことでしょう。

 この記事では、日本のDX推進事例として「DX銘柄2023」に選定された10社をご紹介します。事例を把握することで、DXの推進をイメージでき、社内でのDX推進に役立てられるはずです。

DXに挑戦する日本企業

 DXとは、ITを活用して社会や顧客のニーズに柔軟に対応すべく、ビジネスモデルや組織、業務プロセスを変革し、競争優位を確立することです。単にデジタルツールを導入するだけでなく、競争優位を確立するために、「企業そのもの」を変革することがDX本来の目的といえます。

 現在、日本では多くの企業がDXに挑戦しています。その中には、既に一定の成果を出している企業も少なくありません。

 それぞれ、自社の置かれた状況を見つめ直し、社会と顧客のニーズに応じるために、ITを駆使して変革に取り組みました。その軌跡には、DXを成功させるための多くのヒントがあります。

日本のDX推進企業

 経済産業省は、2015年からIT利活用に積極的に取り組む企業を「攻めのIT経営銘柄」として選定。2020年からはこれに代わり、DXに取り組む企業を「DX銘柄」として選定しています。

 ここではDXの事例として、「DX銘柄2023」に選定された10社の取り組みについて見ていきましょう。

DX銘柄2023に選定された企業
  • 株式会社トプコン
  • 日本郵船株式会社
  • 清水建設株式会社
  • 旭化成株式会社
  • 株式会社ブリヂストン
  • 株式会社日立製作所
  • 凸版印刷株式会社
  • ソフトバンク株式会社
  • 東海東京フィナンシャル・ホールディングス株式会社
  • 東京センチュリー株式会社

トプコン:医・食・住の3分野でDXソリューションを提供

 精密機器メーカーの株式会社トプコンは、自社を「創業90年の伝統あるベンチャー企業」と位置付け、「医(ヘルスケア)」「食(農業)」「住(建設)」の3分野でDXソリューションを提供しています。

 創業時から培ってきた光学・センシングのコア技術に、画像処理、機械学習などの最新技術を融合した商品・サービスを展開。下記3分野でのDXの取り組みは、世界的な社会貢献につながっています。

医(ヘルスケア)分野

 医(ヘルスケア)分野では、全自動で撮影できる3次元眼底像の機器とネットワークをつなげ、かかりつけ医はもちろん、眼鏡店、ドラッグストアで眼健診(スクリーニング)ができる仕組みを構築。眼疾患の早期発見と医療効率の向上に貢献しています。

食(農業)分野

 食(農業)分野では、生産性・品質向上のため、3次元の位置情報を搭載した農機の自動運転システムや、作物の発育状況のデータをクラウドで一元管理できるサービスを提供。「農業の工場化」を推進しています。

住(建設)分野

 住(建設)分野においては、建機を自動制御する「ICT自動化施工システム」や高精度の「3次元デジタル測量機」を提供し、建設現場とオフィスの連携を実現。これにより、建設工事の「測量・設計・施工・検査」のワークフローをクラウド上で一元管理でき、生産性・品質向上を達成しています。

日本郵船:データセンターや業務アプリケーションにおける“持たないIT”を推進

 日本郵船株式会社は、海上輸送や陸上輸送、航空輸送を取り扱うグローバル総合物流企業です。DXの推進により、海運業での国際競争力を高めるだけでなく、二酸化炭素やメタンガスなどの温室効果ガスの排出量削減や、環境・社会に配慮した経営(ESG経営)の実現を目指しています。

 DX戦略では“持たないIT”をスローガンとし、業務プロセスの標準化とレガシーシステムの刷新を推進しています。

 そのひとつが、「自営データセンターのクラウド化」です。第1段階では自営データセンターをマネージドサービスに切り替え、現在はパブリッククラウドへと移行させる第2段階に取り組んでいます。

 もうひとつが、「業務アプリケーションにおける持たないIT化」です。世界140ヵ所で展開していたコンテナ船事業の業務システムをマネージドサービスに変更するなどの取り組みにより、業務プロセスとデータの全社標準化といった成果を出しています。

 また、技術本部内にDX推進グループを設置し、国内外にDX推進に特化したグループ会社を設立しています。DX人材の育成にも積極的に取り組み、「Project Mt. Fuji」と称する3層のプログラムを展開。デジタルアカデミーやデジタル寺子屋、週刊メルマガなどにより、デジタル技術やサイバーセキュリティの基礎知識などを身に付けた人材の育成を目指しています。

清水建設:ものづくりをデジタルで支え、スマートシティ実現にも貢献

 大手総合建設会社の清水建設株式会社は、2030年までに目指す企業像として「スマートイノベーションカンパニー」を掲げています。また、中期経営計画にもとづいた中期デジタル戦略2020として、「Shimzデジタルゼネコン」を公表。下記3つのコンセプトのもと、DXを推進しています。

ものづくりをデジタルで

 建築事業・土木事業の将来のあるべき姿を提示。その上で、プロジェクト全体を通じて一貫したデータ連携体制を構築しています。

ものづくりを支えるデジタル

 ネットワークやデバイス、多様なデータやアプリケーションを基盤として、「ものづくりを支えるデジタル環境」を構築。従業員がいつでもどこでも安全に働ける環境を整備し、生産性の向上を図っています。

デジタルな空間・サービスを提供

 建物の設計・施工で活用したデータを、竣工後に入居者や管理者に提供。また、それを複数の施設で展開するだけでなく、実際の都市や建物をコンピュータ上で再現する「デジタルツイン」にも活用して、スマートシティの実現に寄与しています。

旭化成:全社員にDX教育を行い、デジタル活用のマインドセットを推進

 旭化成株式会社は「マテリアル領域」「住宅領域」「ヘルスケア領域」の3つを主な事業領域とする大手総合化学メーカーです。DX推進に向けて、4つのフェーズに分けたロードマップを作成し、段階的な取り組みを進めています。

旭化成におけるDX推進の4つのフェーズ
  • デジタル導入期(2018年~):マテリアルズ・インフォマティクス(※)、生産技術革新など
  • デジタル展開期(2020年~):DXビジョン策定、デジタル共創本部・共創ラボの創設など
  • デジタル創造期(2022年~):デジタルモデル変革、経営意思決定への活用、人財マネジメントへの活用など
  • デジタルノーマル期(2024年~):全従業員がデジタル活用のマインドセットで働く

※マテリアルズ・インフォマティクス(MI):有機材料や無機材料など、さまざまな材料(マテリアル)の開発に、機械学習などの情報科学(インフォマティクス)を用いること

 また、DX人材の育成にも注力しており、2024年の「デジタルノーマル期」に向けて全従業員を対象にDX教育を実施しています。デジタル知識の習得度合いに応じて、レベル1から5とスキルを見える化し、各レベルに到達した社員にはブロックチェーンで管理されたオープンバッチを発行。これにより社員のモチベーションを上げ、自発的な学習を促しています。

ブリヂストン:遠隔モニタリングツールを活用した新サービスを展開

 タイヤメーカーの株式会社ブリヂストンは、長年の経験で培った匠の技である「リアル」と「デジタル」を融合し、DX推進を目指しています。

 DXの取り組みのひとつが、タイヤの空気圧と温度の情報を遠隔モニタリングできるツール「Tirematics(タイヤマティクス)」を活用した輸送事業者向けの新サービス「リアルタイムモニタリング」です。

 これにより、タイヤの状態をリアルタイムで確認でき、パンクやバーストといったタイヤトラブルを未然に防ぐことができます。また、走行中にタイヤの異常が検知されると、車両管理者だけでなく、ドライバーにも通知される仕組みです。

 さらに、全国900以上の拠点を持つ「ブリヂストンサービスネットワーク(BSN)」を活用して、迅速なメンテナンスサービスを提供することもできます。タイヤの空気圧を確認して適正に管理することで、燃費の改善やCO2排出量の削減にもつなげています。

日立製作所:取引先のDX推進をグローバル規模で展開

 総合電機メーカーの株式会社日立製作所は、「Lumada(ルマーダ)」を中心に、あらゆる取引先のDX推進に取り組んでいます。Lumadaとは、取引先の膨大なデータから価値を発見し、日立グループが培ってきた先進的なデジタル技術を活用して、イノベーションを加速するソリューションやサービス、テクノロジーのこと。取引先の「課題の理解」「解決方法の創出」「実装」「運用」「保守」といったサイクルをデータ中心で行うことで、Lumada事業の拡大を目指しています。

 また、2022年4月に日立グループ全体のデジタル戦略の推進とLumada事業を担う日立デジタル社を設立しました。日立デジタルはアメリカを拠点にするため、アメリカでの実践事例をいち早く取り入れることが可能です。これにより、グローバル市場でDX事業の拡大を目指しています。

凸版印刷:IDデバイスを活用し、本物を見極めるデジタルID認証事業を展開

 総合印刷会社の凸版印刷株式会社は、自社のデジタル変革を推進するコンセプト「Erhoeht-X(エルヘートクロス)」のもと、DX推進で必要な「課題の顕在化」「GOAL設定」「ソリューション検討」「実装・運営」「評価改善」といったプロセスを支援しています。

 2021年より、電源のない物にIDデバイスを貼り付け、システム上で扱う「デジタルID認証事業」も進行中です。既に中国の高級酒や高級茶、日本の高級キャラクターグッズなどで採用され、NFCタグなどのIDデバイスによって本物かを見分ける仕組みを構築しています。

 さらに、スマートシティの実現に向けた「自動見守り」事業も推進中。これは、「まち」「工場」「ビル」などを、人手を介さずに監視し、異常時にはアラートを出すことで、街全体の安全を守る仕組みです。

 近年、災害が多発していることから、中・小規模河川の水位や土砂斜面の状態などの監視として自治体でも活用されています。

ソフトバンク:DXを推進し、保険・小売・ヘルスケアの領域で新事業を推進

 ソフトバンク株式会社は、ネットワーク構築やデータセンター、クラウドなど、さまざまなソリューションを提供する企業です。近年は、保険や小売、ヘルスケアなどDXを活用した新たな事業も展開しています。

 DXの取り組みとして、主に下記の3つがあります。

デジタルワーカー4000プロジェクト

 デジタルワーカー4000プロジェクトは、社内の生産性向上を目指し、2019年4月に社長みずからが主導する形でスタート。受付業務へのAI導入やモバイル契約の登録業務にRPAを活用することで、約4,500人の1ヵ月分の業務時間を削減するなど、業務効率の向上を実現しています。

5Gの展開

 「デジタル田園都市国家構想」に向けて5G基地局の整備を推進。2022年3月末までに人口カバー率90%以上、基地局数は2万3,000局を達成しました。

 2021年10月からは、5Gよりさらに高速通信が可能な「5G SA(スタンドアローン)」、2023年3月からは「プライベート5G(共有型)」を開始。プライベート5Gは、企業や自治体の敷地内に5Gネットワークを提供するサービスです。これにより、産業全体のDXを推進します。

新たな事業創出

 DX専門組織「デジタルトランスフォーメーション本部」を2017年に設立。2022年には約20の新規事業を展開し、そのひとつがヘルスケアDXの「HELPO(へルポ)」です。

 まだ病気になっていない状態の「未病」に着目し、「病の予防」「発症時の軽症改善」「健康寿命の延伸」を目的とした健康管理を提供。健康医療相談やオンライン診療により、企業の健康経営支援とユーザーの診察にかかる時間と費用の削減に貢献しています。

東海東京フィナンシャル・ホールディングス:ブロックチェーンで金融商品の新形態を実現

 東海東京フィナンシャル・ホールディングス株式会社は、東海東京証券株式会社やCHEER証券株式会社、丸八証券株式会社などの金融機関を傘下に持つ金融グループです。

 DXの取り組みとしては、東海東京証券がブロックチェーンのノウハウを有価証券に応用したセキュリティ・トークンを個人投資家向けに販売し、金融商品の新しい形態を実現しています。

 また、スマートフォン専業証券のCHEER証券は、「ポイント株主プログラム」との連携を開始。ポイント株主プログラムとは、自社の商品・サービスの利用者に株価と連動したポイントを付与し、消費者は貯まったポイントを実際の株式に交換できるサービスです。消費者はポイントで手軽に投資を体験することができます。

東京センチュリー:スタートアップ企業のエネルギーマネジメントシステムを活用し、EVリースを最適化

 大手リース会社の東京センチュリー株式会社は、DX推進により「No.1モビリティ・サービスカンパニー」を目指しています。

 モビリティビジネスとは、法人が希望する車両を購入して貸し出すオートリースやレンタカーのことです。近年、EV(電動自動車)が多くの注目を集めていることから、東京センチュリーはスタートアップ企業である株式会社Yanekara(ヤネカラ)と業務提携し、DX戦略を推進。Yanekaraのエネルギーマネジメントシステムなどを活用し、顧客ニーズの把握や余剰電力の売電などに役立てています。

 これにより従来のEVリース事業だけでなく、車両の稼働状況の見える化やEV台数の最適化などが可能です。

自社にあった取り組み方で、DXを実現しよう

 この記事では、日本におけるDXの推進事例として、経済産業省の「DX銘柄2023」に選定された10社の取り組みを紹介しました。

 いずれも、自社が培ってきたノウハウや技術を最先端のITと融合させ、新しい展開を進めた事例といえます。現状を把握し、ビジョンにもとづいて戦略を立て、組織的に推進したことで、一定の成果につながったといえるでしょう。

 ぜひ、本記事で紹介した事例を参考に、自社に合った取り組み方でDXを進めてみてください。

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エンタープライズIT研究所(エンタープライズアイティーケンキュウジョ)

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