IoTデバイスとは? 普及の背景と役割、活用例などを解説
近年、IoTデバイスは急速に普及し、人々の生活を豊かにしています。しかし、IoTデバイスがどのような機能を持ち、どのような場面で活用されているのか、よくわからない人も多いかもしれません。
この記事では、IoTデバイスの基本知識をはじめ、活用例、役割などを詳しくご紹介します。最後まで読んで、IoTデバイス導入の参考にしてください。
IoTデバイスとは、ネットワークに接続可能なデバイス
IoTデバイスとは、IoTとして利用される機器のことをいいます。IoT(Internet of Things)は直訳すると「モノのインターネット」で、あらゆるモノがインターネットにつながることです。このモノにあたるのがIoTデバイスです。
最も身近なIoTデバイスとしてはスマートフォンやパソコン、タブレットがありますが、そのほかにも洗濯機やエアコンなどの家電製品、スマートロックなどがあります。
急速に普及するIoTデバイス
IoTデバイス市場は、スマートフォンの普及や導入コストの低下などにより、国内外で急速に拡大しています。アメリカの調査会社IDCは、2025年に世界のIoTデバイスは416億台に達すると見通しを発表。さらに、IDC Japanでは、2027年には国内IoT市場規模が2022年の1.5倍になると予測しています。 IoTデバイスに設置するセンサーの低価格化や5G(第5世代移動通信システム)が登場したことで、さらに普及は加速すると考えられます。
また、企業にとっては、IoTデバイスを導入することで業務効率化や生産性向上はもちろん、競合他社との差別化も可能です。ユーザーはより便利な製品を好むことから、新たなIoTデバイスの開発は企業の成長に少なからず影響するといえるでしょう。
IoTデバイスの役割
IoTデバイスが果たす役割はさまざまです。ここからは、IoTデバイスの主な役割について解説します。
状態の検知・把握
センサーが付いたIoTデバイスには、モノの状態や環境の変化を検知・把握する役割があります。たとえば、オフィスビルにセンサー機能を搭載したIoTデバイスを導入すると、センサーが各フロアの温度や湿度を計測し、リアルタイムにエアコンを制御し適温にすることが可能です。
また、光センサーや赤外線センサーによって自動ドアや改札機、自動配膳ロボットなどを、人の動きを検知して動作させることもできます。センサーやカメラによりモノの状態を把握できることから、機器や設備の異常もいち早く発見できます。
データの送受信
IoTデバイスは、モノ同士でデータを送受信することが可能です。データの送受信はモノ同士が直接するのではなく、インターネットやクラウドを経由して行います。人を介さず直接モノ同士がデータをやりとりするため、迅速に対応できるのが特徴です。
たとえば、川の水位が上昇したことを察知すると同時に、今まで蓄積されたビッグデータと照合することで、自動的に警報を出すといったこともできます。また、近年、注目を集めているのが車の自動運転です。車に付けたセンサーと信号機のデータを送受信することで、信号機が赤になると速度をゆるめ自動停止するといった制御ができます。
データの処理
センサーなどから収集したデータを処理・分析することも、IoTデバイスの役割のひとつです。IoTデバイスのほとんどが、クラウドにデータを蓄積しています。しかし、収集したデータをすべてクラウドに送信するとデータ量が多くなりすぎてしまい、セキュリティ低下や通信の遅延といったリスクにつながりかねません。そのため、IoTデバイスの付近にサーバーを分散配置し、データ処理を行うことでシステムの負荷やネットワークの遅延を軽減するエッジコンピューティングの導入が増えています。
IoTデバイスの活用例
IoTデバイスは、既にさまざまな分野で導入されています。IoTデバイスの主な活用例を分野別に見ていきましょう。
医療
近年、ウェアラブル端末が普及し、患者の脈拍数や血圧などの生体情報を送信し、遠隔地にいる医師がリアルタイムでモニタリングすることが可能になっています。これにより、遠隔地や被災地はもちろん、寝たきりや病気などで通院できない患者でも受診できる「オンライン診察」が実現しています。
さらに、遠隔医療ロボット(手術支援ロボット)を活用すれば、リアルタイムの手術も可能です。日本では2012年に手術支援ロボットを使った手術が保険適用され、現在では肺や心臓などさまざまな手術に活用されています。手術支援ロボットは人間よりも細かい動きによる高精度の手術ができるため、今後さらに普及することが期待されています。
製造
工場では、カメラやセンサーを搭載したIoTデバイスなどによる「スマートファクトリー」化が進んでいます。IoTデバイスに各種センサーを取り付けることで、生産ラインの稼働率や進捗状況をリアルタイムで可視化することが可能です。稼働率が悪い場合には人と設備の作業計画を見直すことで、生産性向上を期待できます。
また、センサーで観測したデータをAIが分析することにより、機械や設備の故障を予兆の段階で発見することも可能です。仮にトラブルがあっても、IoTデバイスが検知することで即時対応でき、工場全体の稼働率を向上できます。
運輸
物流業界では、IoTの導入により入出庫のオートメーション化(自動倉庫)が実現しています。従来、在庫状況を把握するには、商品に付けたバーコードを一つひとつ読み取る必要がありました。しかし、非接触でデータを読み取れるRFIDタグを導入することで、高い棚に積み上げられた商品を下ろすことなく、一括で商品データを読み取ることができます。
さらに、自動搬送ロボットを導入 することで、人を介さずに商品をピッキングすること(商品を選別して取り出す)も可能です。
また、ドライバーと車両の状態をIoTデバイスで計測する「スマート点呼」の活用も進んでいます。アルコール濃度や体温・血圧・心拍数を計測してドライバーの健康状態を確認でき、タイヤの空気圧や故障診断のデータで車両の状態を確認できます。
身近なIoTデバイス
IoTデバイスは、前述した分野別の活用例に限らず、既に私たちの身近にあふれています。身近にあるIoTデバイスには、主に下記のようなものがあります。
身近なIoTデバイス
IoTデバイス | 具体例 |
---|---|
モバイルデバイス | スマートフォン、ノートパソコン、タブレットなど |
スマートホームデバイス | エアコン、冷蔵庫、電子レンジ、ドア、照明、カーテンなど |
セキュリティデバイス | 監視カメラ、監視センサー、スマートロックなど |
ウェアラブルデバイス | スマートウォッチ、スマートグラスなど |
スマートフォンやノートパソコン、タブレットなどのモバイルデバイスは、既に広く普及しています。近年、特に注目を集めているのがスマートホームデバイス(スマート家電)です。エアコンや洗濯機などを外出先からスマートフォンで操作したり、不在時でもインターホンの応答をしたりすることができます。生活の利便性が大きく向上するため、今後さらに普及するでしょう。
IoTデバイスの今後
IoTデバイスは、日々の生活やビジネスに役立つことから、将来的にさらに普及することが予想されます。しかし、そこで課題となるのがセキュリティです。IoTデバイスの中には、ノートパソコンやスマートフォンよりもサイバー攻撃やウイルス感染、情報漏洩のリスクが高くなるものがあります。パソコンやスマートフォンに比べて処理能力が低く、セキュリティ機能が低いからです。
また、ひとつの機器がウイルス感染すると、連携するあらゆるIoTデバイスへの感染も予想されます。さらに、サーバーのダウンや情報漏洩が起きると、企業の信用が落ちるだけでなく、事業の存続にも影響するおそれがあります。最悪の事態を防ぐためには、IoTデバイスのセキュリティ対策を万全にすることが重要です。特に製造業においては、工場などの製造現場の設備やシステムを制御する技術、すなわちOT(Operational Technology)のセキュリティを向上させる必要があり、注目が高まっています。
社会課題に応えるIoTデバイスを開発し、事業を成長させよう
IoTデバイスは急速に普及しており、市場でのポジションを確立するためには積極的なIoTデバイスの導入が必要です。
既にIoTデバイスはさまざまな産業で活用されており、私たちの生活の中にも浸透しつつあります。一方、今後の展開ではセキュリティ面の向上が課題です。これをクリアし、社会課題やユーザーニーズを満たすIoTデバイスを開発できれば、事業の成長も期待できるでしょう。