既存ソリューションへの生成AI実装が本格化
2023年のMicrosoft Ignite Japanの基調講演は、ほぼ「AI一色」と言ってもいいほどAI関連のトピックを前面に押し出す内容となった。冒頭に登壇した日本マイクロソフト 代表取締役社長の津坂美樹氏は、既に2,300社以上の日本企業が生成AIのプロジェクトに同社のAIプラットフォーム「Azure OpenAI Service」を採用しており、また100社以上のパートナー企業とAI関連の協業を推進している状況を紹介し、国内のAI市場におけるマイクロソフトのプレゼンスをアピールした。
特に同社が提供する生成AIソリューション「Copilot」は、現在様々なソリューション領域へと適用の幅を広げており、デベロッパー向けに開発支援機能を提供する「GitHub Copilot」や、Microsoft 365の各種ビジネスアプリケーションに生成AIの機能を組み込んだ「Copilot for Microsoft 365」が急速にユーザーを増やしつつあると同氏は力説する。
「Copilotを提供することで、まさに“副操縦士”として皆さんの仕事や活動を支援することがマイクロソフトのミッションだと考えています。現在マイクロソフトは『地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする』というミッションを掲げていますが、Copilotはまさにこれを達成するための技術だと言えます」(津坂氏)
特にCopilot for Microsoft 365については、ExcelやWord、PowerPoint、Teamsといった一般のオフィスワーカーが日々利用するアプリケーションの中に生成AI機能が埋め込まれることで、業務効率の大幅な向上が期待されるという。事実、同製品のアーリーアクセスプログラムには数多くの日本企業が参画しているが、その1社であるホンダではCopilot for Microsoft 365の技術検証を通じて大きな手ごたえを得ているという。
基調講演に登壇した本田技研工業 執行職 デジタル統括部長の河合泰郎氏は、昨今の「生成AIブーム」とでも言うべき状況について次のように所感を述べる。
「これまでのデジタル戦略は、主に構造化データを活用して組織のプロセスを改革したり情報活用を促進したりすることに主眼が置かれてきました。しかし生成AIという技術は言語や画像といった非構造化データを通じて、組織の中で働く“人間”に直接アプローチする技術であり、これまでのデジタル技術とはまったく異なる類のポテンシャルを秘めていると感じます」(河合氏)