生成AIに積極的に投資している企業はリスクにも注目
PwC Japanグループでは、生成AIに関する実態調査を2023年の春と秋に実施している。これは国内企業に所属する従業員1,000人ほどを対象とした調査だ。春段階では生成AIを実際に使っている、あるいは使ったことがあるとの回答は10%だった。それが秋には73%と一気に増加。
PwC Japanグループ データ&アナリティクス リーダー/AI Labリーダーで、PwCコンサルティング 上席執行役員 パートナーの藤川琢哉氏は、この結果から「生成AIの民主化がかなり進んできたと見て取れます」と言う。さらに調査では、生成AIを使った社外向けサービスを提供しているとの回答も12%あった。社内で生成AIを使っているとの回答と合わせれば34%となり、企業が全社規模で生成AIの活用に取り組んでいることがうかがえる。
一方で、生成AIには脅威も感じているという。春段階でビジネスの存在意義が失われるなど漠然とした脅威を感じている企業が多かったが、秋にはそれが他者に対し相対的に劣勢にさらされるとの脅威に変わった。これは生成AIの活用に出遅れると競合他社に先を越される、あるいは生成AIを使うディスラプターが業界に参入してくることなどに脅威を感じているのだ。
秋の調査では、予算についても訊ねている。生成AIに数十億円以上の予算を確保している企業が12%、数億円規模の予算が24%。100万円未満との回答もあり、「予算規模には格差がありますが、4分の1くらいの企業が億以上の予算規模を確保しています」と藤川氏。企業における生成AI技術への注目度の高さが、ここにも表れているという。
確保した予算で既に18%が生成AIをなんらか導入しており、導入済みか導入予定の企業は、2024年9月までで見れば58%と過半数を占める。多くの予算を確保し積極的に生成AIの活用を進める企業では、リスクに対する注目度も高い。攻めているところは守りのAIガバナンスにも力を入れているのだ。
「AIのガバナンスは難しいテーマとなっており、各国でAI規制も検討され、OECDの調査ではこれまでに69ヵ国の1,000を超えるAIに関する戦略、規制が生まれています」と藤川氏。生成AIのハルシネーションなど新たなリスクに対し、どの国も現在進行形で規制を検討中だと指摘する。そして「このような規制をにらみながらAIガバナンスを推進していくのは、企業にとってかなり難しいです」とも言う。
AIの規制はEUが最も厳しく、日本や米国はあまり厳しくない。多くの企業はグローバルでビジネスを行っており、国や地域によって規制がばらばらなのも対応をさらに難しくする。PwCとしては、攻めと守りの両方の観点から、生成AIの推進をする必要があると考えており、双方の側面で生成AI活用戦略を支援するとした。ツールを評価しどのようなツール導入が適切かはもちろん、ガバナンス体制をどう構築するかなどまでサポートする。