新たに浮上した、SQLスキルとメタデータ管理の課題
着実に進展するマザーハウスのデータ分析。一方で、新たな課題も浮上しているという。1つ目は、IT専任担当者が少なく、SQLによるデータ加工スキルの習得に課題を感じていること。2つ目は、メタデータ管理だ。
「現在、どのようなデータがあるか、どういったデータを作成したかという情報を一部の社員の記憶に頼っている状態です。人員の入れ替えの際などに問題になる可能性があります」(山本氏)
マザーハウスはこれらの解決策を模索中だ。SQLのスキルに関しては、「BigQuery データ キャンバス」を活用し、自然言語でのリクエストからSQLクエリの雛形を生成することで補完できるのではとみている(ただし、生成されたSQLは人によるチェックや調整が必要な場合がある)。メタデータ管理に関しては、それらを体系的に管理するデータカタログの活用を検討しているという。
あるべき姿に振り回されず、自分たちの「手札」で現実解を
マザーハウスの取り組みには、データドリブン経営に移行する際のヒントがつまっていると感じる。現在のIT専任担当者は、増田氏と山本氏の2人だけ。限られたリソースで基盤を構築し、活用を促進するには、「初めに自分たちが持っている手札を把握することが大切」と山本氏は強調する。
この「手札」には、既存システムや資金だけではなく、人材スキルセットも含まれる。マザーハウスの場合、山本氏や外部パートナーがもともとプログラマで、「分析の前に必要なデータ加工は自分たちでできる」といった判断ができたこと、ITの素養がある社員が数人いたことなども、話がスムーズに進んだ要因だったという。
あるべき姿に振り回されないことも大事だった。増田氏は「理想に向かって一気にすべてを実現しようとすると、リソース不足に陥ります。そこで、『まずはここだけやろう』と現実的な落とし所を見つけて、小さく進めていきました」と振り返る。「まだ道半ばですが、お客様のブランド体験向上やスタッフの生産性向上に寄与していきたい」と山本氏。
マザーハウスを支える中の人の努力が垣間見えて、より一層好きになった。