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IT部門が知るべき「ESG経営実現」のための基本知識

東証要請で一段と注目集める「非財務情報開示」の行方 高度化する要求にIT部門が果たすべき役割とは?

第1回:ESG経営を加速する、IT部門の新たな使命

 日本企業は今、国内外の法規制、国際的なイニシアチブによる要請、それに付随する海外企業(取引先)からの追加要請など、これまで以上に多様で正確な非財務情報の開示が求められている。開示内容の多様化や厳格化が加速するなかで、対応を高度化するためにも企業価値、競争力向上に役立つ「非財務情報の管理」が重要視される。なぜ非財務情報開示の要請はここまで拡大してきたのか、まずはその背景から理解したい。

最大の契機は東証による“異例の要請”

 非財務情報とは、企業の経営方針や経営課題、またESG(環境・社会・統治)を示す情報全般のことを指す。これには顧客満足度や人材ポートフォリオ、従業員の福利厚生や環境への取り組みなどが含まれており、企業の持続可能性や社会的価値を評価するための重要情報である。それら非財務情報の開示に関する潮流は、ここ数年めまぐるしく変化を遂げてきた。

 近しいところでは、2023年から有価証券報告書に「サステナビリティ情報」の記載欄が新設され、そのなかでコーポレートガバナンスや人的資本、特に多様性に関する情報開示が求められている[1]。また、IFRS財団傘下のISSB(国際サステナビリティ基準審議会)も非財務情報開示基準を発表しており、その日本版が2~3年後には適用されるのではないかとも言われている[2]。法制度だけではなく、任意開示である統合報告書の発行企業数も年々増加の一途をたどっており、強制・任意問わず、企業の情報開示場面は格段に増えているのが現状だ。

 そのような状況下において、最大の契機といえるのが東京証券取引所(以下、東証)による要請だ。2023年3月、東京証券取引所がプライム市場とスタンダード市場に上場する約3,300社に、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関するお願いについて」という通知文を提示。証券取引所が企業経営者全体に、企業価値向上に向けた経営実現を促すという異例の内容だった。

 東証はこの通知で、①資本コストや株価を重視した経営の実現、②投資家対話の開示、③正確な情報開示を主として求めている。

 中核は①資本コストや株価を重視した経営の実現であり、プライム市場上場企業の約半数が当時ROE(自己資本利益率)8%未満かつPBR(株価純資産倍率)1倍未満という状況だったため、PBR1倍を超える=企業価値の向上を目指すべきという見解を強く打ち出している。企業価値向上のため企業は具体的にどのような改善活動を進めるのかを開示するとともに、そのために必要な②投資家との建設的な対話の実績や、その前提となる③正確な情報の開示も求めるというもので、この3テーマが密接に関連しあって「企業価値(PBR)向上」を成すものだとしている。

 そしてこの要請の登場が、非財務情報開示を取り巻く状況を新たなステージに押し上げたと言っても過言ではない。

効率的な収集だけでなく、戦略的な開示にも注目

 企業価値(PBR)向上を実現する、つまり企業が持続的な成長を遂げ価値創造を続けるには、足元の「稼ぐ力」を高め、実績を出しながら将来の「成長期待」を醸成する、その両面が必要となる。どちらか一方だけを高めても、持続的な企業価値向上は実現し得ないだろう。

 稼ぐ力と成長期待の両側面を追い求めるには、財務資本・非財務資本を表裏一体として捉え、戦略的な資本投下と成果測定を繰り返す企業運営が重要になる。中長期的な時間軸のなかでステークホルダーが重視する視点を徹底的に把握し、企業として本質的に注視すべき要素を認識しなくてはならない。あらゆるステークホルダーと、ビジネスモデルや事業戦略を正しく理解し合い、創出する価値を増大するための価値創造ドライバーとなる定量的要素を明確に定め、それを押し上げる施策にコミットし実績を報告する。このサイクルを企業運営に織り込み、実現することが求められる。

 足元の実績を財務情報で的確に捉え打ち手を講じながらも、将来の事業シナリオに沿った非財務資本の管理を進め、ステークホルダーとの対話により評価向上を促す。非財務情報は、将来財務を担うために欠かせない示唆情報となり得るのだ。

 従来のような活動結果としての非財務情報の開示にとどまらず、将来の成長期待を醸成するための企業ケイパビリティとしての非財務情報の開示が肝要だ。

 しかし、企業の将来を見据えるために不可欠な情報であるが故に、当然のことながら、その正確性、適時性、効率的な収集と有効な管理基盤の実現など情報活用への期待も同時に高まる。将来的に非財務情報も監査対象になることも視野に入れて、今から備えを検討する企業もある。

 加えて、情報粒度やカバレッジ範囲にもさらなる関心がおよぶだろう。事業戦略に即した非財務資本への投資やそのROIを見るべき場面、連結グループ全体で適切なシナジーが創出されているかどうか広範に見るべき場面が増えることは想像に難くない。

 このように、従来同様の開示を継続するための情報収集の効率化だけではなく、企業価値向上に向けて必要な非財務情報をいかに特定、収集、正確に管理するか、どのように活用し戦略的に開示するかに注目が集まっているのだ。これがまさに、非財務情報開示の多様化、厳格化、深化の加速背景であり、情報活用に向けた期待の高まりの実態である。

[1] 金融庁「サステナビリティ情報の開示に関する特集ページ

[2] 国際サステナビリティ基準審議会プレスリリース「ISSB—最初のサステナビリティ開示基準を公表」(2023年6月23日)

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非財務情報管理で整理しておきたい、3つの観点

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この記事の著者

今野 愛美(コンノ マナミ)

アビームコンサルティング 企業価値向上戦略ユニット ダイレクター2006年に入社。国内外企業に対して、企業コンプライアンス/SOX法対応、財務経理/リスクマネジメント業務の改革や教育/意識改革プログラムの策定プロジェクトに従事。現在はアビームコンサルティングのESG/サステナブル経営支援・Digit...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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