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今なお続く建設業界の「2024年問題」―業界エキスパートとして人手不足と効率化に挑む

建設業界の人手不足と効率化の解決の道は

──PImacsを利用する建設会社や建設業界にはどのような課題があるのでしょうか。

永井氏:建設業界は運送業と同様に、2024年問題の影響を大きく受けています。この問題は2024年を過ぎても依然として深刻で、特に残業規制により人手不足が顕著です。この影響はPImacsを導入している建設会社に留まらず、仕事を請け負う下請業者にも広がっています。

 建設業は多層的な構造を持ち、建設事業者、ハウスメーカーや工務店の下には、大工、基礎工事、足場組みなどを担う専門業者が存在しています。残業規制の影響で倒産する業者が増え、人手不足が深刻化する中、発注先も減少しているのが現状です。その結果、適正な発注ができない企業は、下請企業からから選ばれなくなるリスクが存在しています。

 さらに、建設業の平均年齢は上昇しており、後継者不足も大きな課題になっています。こうした状況で、業界全体で効率化とスリム化が求められており、もはや待ったなしの状態です。

 これまで、業務システムには「自分たちの業務をそのままシステム化したい」という要望が多かったため、個別対応が一般的でした。しかし、最近では「パッケージを最大限活用し、自社の非効率を改善したい」という姿勢に変化しています。

 また、人材の流動性が高いため、独自色が強すぎる業務フローでは新たな人材の戦力化に時間がかかります。標準的でシンプルなシステムが導入されていれば、新しく入った人もスムーズに業務に適応できますが、複雑でこだわりの強い運用を続けていると、せっかくの人材を活かせず、効率が低下します。このような背景から、より標準化された業務フローを求める声が高まっています。

──そのような状況のなか、PImacsではどのような価値を提供されているのでしょうか。

永井氏:当社は、標準化と効率化を進めながらも、各社のコアコンピタンスやこだわりを尊重しています。ただし、自社のこだわりが本当に必要なのか、単に慣習として続けているだけなのかをお客様自身で判断するのは容易ではありません。そこで、当社が蓄積した豊富なノウハウを基準に業務見直しをサポートし、価値のある部分とそうでない部分を明確にします。たとえば、『ここは重要です』『こうすればコストを抑えながら効率化が可能です』といった提案をしています。

 さらに、約5年前からは、ローコード開発基盤「atWill Platform」を活用し、スピーディーに機能を追加することで各社の要望に応えています。以前は、新しい機能をゼロから構築していましたが、この基盤の導入により、専門家に依頼するか、内製化するかの選択肢を提供できるようになったことは大きな変化です。このように、Fit to Standardと個別要件の実現をあわせた取り組みが、他社サービスとの差別化につながっています。

データとAIの力が高めるソリューションの価値

──PImacsとProActiveの統合に取り組まれているそうですが、この統合によって今後どのようなソリューションが展開されるのでしょうか。

永井氏:これまで、PImacsとProActiveは一定の連携が可能でしたが、今回の統合によりデータがさらに密接に結びつき、より効果的に活用できるようになると考えています。建設業界でもデータ活用の重要性が増していますが、人材不足により、日常的にデータ分析を行える人材の確保が難しいのが現状です。この統合とAIの活用により、自動でデータ分析やインサイトを提供できるようになり、専門的なスキルがなくてもデータを活用できる未来が近づいていると感じています。

 PImacsは業務フローに沿った運用を通じて、自然に顧客情報や営業活動、契約内容、原価情報、工事の進捗状況などのデータをリアルタイムで収集する仕組みを提供します。このデータを活用することで、営業や工事の進捗状況を可視化し、現場の管理者が全体の工事状況を迅速に把握できるようになります。

 これまで、各案件の進捗や営業状況を個別に確認する必要がありましたが、ProActiveとの統合とAI活用により、効率的に財務や人事など重要な情報にアクセスできるようになります。たとえば、複数の工事案件に優先度を付け、注目すべき案件や対策が必要なポイントを自動で示すことが可能になるでしょう。

 また、統合といっても、単に1つにまとめることが最適とは限りません。利用者の目的によっては、独立したシステムの方が効率的な場合もあります。たとえば、経理部門の要望で業務フローに変更を加えることが、現場にとっては不要なプロセスになることもあります。そのため、それぞれのシステムが得意分野で独立していることも重要だと考えています。

──今後どのような事業展望をお持ちでしょうか?

永井氏:今後は、対応範囲を広げ、さまざまな工事に対応できるようにするだけでなく、発注者とのコミュニケーション機能などを強化し、専門工事を担う建設業の皆様に、より幅広く活用いただきたいと考えています。ProActiveとPImacsの統合によるデータ連携の強化とAIの活用が進むことで、対応できる範囲が一層広がると期待しています。まだカバーしきれていない部分もあるため、新たな分野への対応を積極的に進めていく方針です。

 現在の建設業界は、人手不足を背景に、適正な発注額の確保が求められています。発注側が適切な金額を設定しないと、現場が疲弊し、持続的な運営が難しくなります。また、建設業者側もシステムやデータを活用して業務を効率化し、利益率を高めることが求められています。こうした取り組みによって従業員やパートナーに適正な報酬を支払える体制を整え、業界全体で適切な対価を得られる方針への転換が不可欠だと考えています。当社では、AIやデータ活用の支援を強化し、このような取り組みに貢献していきたいと考えています。

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この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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