日本製造業が直面するデータ標準化とレガシーシステムの課題
──そうした変化の中での製造業の課題とは何でしょうか?
製造業のDXにはまだまだ障壁が残っています。その1つが、データの標準化という課題です。この課題の背後には、製造システムに古い設備が多く残っている現状が関係しています。
データには「精度」「粒度」「鮮度」という3つの重要な要素があります。「精度」はデータの正確さ、「粒度」は情報の細かさ、そして「鮮度」はリアルタイム性を意味します。理想としては、5W1Hの細かい情報が正確に、しかもリアルタイムで取得できることですが、現場ではそれが簡単にはいきません。現場のメイン業務は物を生産することにあり、データ入力に多くの時間をかけてしまうと本来の生産活動に支障が出てしまうからです。
このため、データの自動取得が重要となっています。製造システムからのデータ取得や、IoTによる機械からのデータ取得が注目されました。しかし、日本の製造業は「カイゼン文化」の中で旧設備を長く使用する傾向があり、昭和からの老朽化した設備も多く残っているため、データ取得の基盤自体がないのです。一方、中国などの新興国では、新しい設備インフラによってデータ取得がスムーズになり、着実に進展が見られ競争力を増しています。
もう1つの課題は、レガシーシステムの問題です。これは、スクラッチで開発されたシステムの保守性の問題ともいえます。古いシステムになると、システムを作った人間しか仕様を理解できないことも多く、システムの仕様を調査するだけで1年以上かかることもあります。さらに、それを誰が保守するのかという問題も出てきます。社内で仕様を理解している人材が高齢化して減少しており、工場内で情報システムの担当者を配置して自分たちで改変していくことも、人材不足により難しくなってきています。そのため、それを外部化し、長期的に使用できる形にしていく必要があります。
製造業システムに30年近く関わってきた経験から見ると、進展は階段状に進んできましたが課題はまだまだあると感じます。期待と現実の間で進展と停滞を繰り返しながらも、現在はデータの標準化やシステムの刷新が重要になってきているといえます。
業界特化と標準化を両立する「atWill」の現場改革ソリューション
──そうした製造業界の変化や課題を踏まえて、atWillの強みは何でしょうか?
データの標準化や、老朽化したシステムの保守における人材不足など、製造業が直面する課題を解決するためには、「Fit to Standard」の標準化を軸にしながら、各企業の特性に合わせた柔軟なシステム構築が重要です。この点で、atWillのソリューションは大きな力を発揮します。
atWillには、素材・素材加工や電機・機械など、特定の業界・業種に特化した機能に加え、販売管理・購買管理・在庫管理などの共通機能が揃っています。また、ローコード開発基盤により、各企業のニーズに応じたシステム開発もスムーズに実現できます。
これまでのシステム導入では、企業の業務に合わせて細かな調整を重ねる「Fit & Gap」の手法が一般的でした。しかし、atWillは業界・業種に特化した機能の活用により、標準化された機能を企業の業務に合わせるFit to Standardが可能となり、システム適用率が向上しています。
また、販売管理・購買管理・在庫管理といった業務共通機能が、業種を問わずに利用できる汎用機能を提供するのに対し、業界・業種特化機能は特定業種に合わせたテンプレートで柔軟に対応できます。これらには、SCSKが蓄積してきた業務ノウハウや知財も反映され、独自の強みとなっています。
さらに、各企業の個別要件にはローコード開発基盤を活用し、特性に応じたシステムを構築します。システム稼働後もお客様自身が機能を追加できるため、環境の変化にも迅速に対応可能です。