製造業DXに不可欠な次世代人材の育成と変革
──今後の製品戦略と、それに必要な人材についてどのようにお考えですか?
SCSKでは、クラウドERP「ProActive」、製造業向け生産管理システム「atWill」、建設工事業向け基幹業務システム「PImacs」という3つの製品を統合し、デジタルオファリング事業への転換を進めています。オファリング自体は、多くのSIerに共通する方向性ですが、SCSKのデジタルオファリングは、既存製品をただパッケージとして提供するのではなく、8,000社を超える取引先との長年の実績から蓄積してきた業務ノウハウと自社の技術知財を加えて価値を生み出すことを重視しています。
そのために、必要なスキルも変化しています。従来のスクラッチ開発では顧客の要望を正確に引き出す「聞く力」が重視されましたが、これからのデジタルオファリング時代には、自社製品をわかりやすく説明する「伝える力」がより重要になります。大学で教えている立場から見ると、若い世代は、この「伝える力」を身につけてきているように思えます。現在の若い人材は授業でパワーポイントを作って発表するような機会が多く、就職活動でもプレゼンテーションが求められます。そのため、話すことや資料にまとめることに関して相当な能力を持っています。こうした若い世代の「伝える力」と、ベテランが持つ要件を聞き出し、仕組み化する「聞く力」を組み合わせて、組織として活用していければと思います。
こうした時代であることを考えると、「SE」という言葉をやめて「コンサルタント」と呼ぶべきではないかと思います。SEの単価ではなく、コンサルタントとしての単価で評価されるべきです。そうしなければ、人件費の上昇に対応できず、人材の問題も改善されません。人材自体の価値を上げていく、つまり売値を上げていくという意味で、コンサルタントとしての価値の提供を目指すべきでしょう。
「ProActive」「atWill」「PImacs」の統合によるAIの可能性
──今後の製品戦略において、AIをどのように活用していくお考えですか?
先ほどお話ししたように、「ProActive」「atWill」「PImacs」といった自社の技術知財を統合し、AIを中心としたビジネスアプリケーションへと進化させていきます。具体的には、製造業に加えて、当社の強みである流通・卸売業、建設業など、業界に特化したオファリングメニューを提供していくつもりです。
また、ローコード開発基盤であるatWill Platformを活用し、API連携を通じて外部データとの柔軟な連携を実現し、顧客が保有する実績データと外部データを組み合わせて、財務予測やサプライチェーンマネジメントの高度化を支援します。こうしたAI・データ駆動型の取り組みにより、変化する事業環境に迅速に対応し、精度の高い経営判断をサポートすることを目指しています。
今後も製造業をはじめとする幅広い業界のお客様と共に、AIとデータ活用によって課題を解決し、変化を成長の機会へと変えていきたいと考えています。