日本国内のIT投資は増加も、ビジネス成果への発展には苦戦
3,100人を超えるCIOから協力を得たグローバル調査。2025年にCIOが取り組むべきリーダーシップやマネジメントの優先課題、テクノロジー投資計画、そしてテクノロジー展開のタイムラインが含まれている。
本題に入る前に藤原氏は、2024年までのCIOの「上司・報告先」について、興味深い変化を紹介した。直近7年間で、CFOに直接報告するCIOの割合が徐々に減少しているというのだ。この背景には、「ITが単なるコストセンターではなく、企業にとって重要な投資分野として認識され始めている」事情があると藤原氏は推察する。
IT予算については、2024年から2025年にかけてグローバルでは平均3.8%の増加が予想されており、日本ではこれを上回る4.4%の増加が見込まれている。ただし、世の中のインフレ率を考慮して過去8年間を振り返ってみると、IT予算は実質的には減少しているようだ。日本の場合は諸外国に比べ比較的インフレが抑えられているため、IT予算は純粋に増加しているといえる。
ITの需要が高まるにつれ、CIOへの期待は高まっていく。CIOには、限られたリソースでより大きな成果を上げ、投資に見合った価値を示し、卓越した実行力を発揮しながらコスト効率を高めることが求められている。さらに、組織内でテクノロジーの革新を推進する役割も担わなければならない。
しかし今回の調査では、テクノロジーの革新を推進するデジタル・イニシアティブの中で、ビジネス成果目標を達成、あるいは上回っている割合はわずか48%にとどまっていることが判明した。
デジタル変革のカギを握る「デジタル・ヴァンガード」とは?
今回の調査では3,100人のCIOに加え、IT以外の領域を担う1,100人超のCxOにも同じ質問を行った。その結果、デジタル・デリバリのオーナーシップを共同で担うCIOおよびCxOが推進するデジタル・イニシアティブにおいては、71%が成果目標を達成、または上回っていた。藤原氏は、こうした共同でオーナーシップを担うCIOやCxOを「デジタル・ヴァンガード」と呼ぶ。なお、この傾向は業界・地域・組織の違いを問わずに見られるという。
デジタル・ヴァンガードとなるCxOは、ビジネス部門に向けたエンド・ツー・エンドのデジタル・デリバリにおけるオーナーシップを、CIOと共同で担っている。彼ら彼女らは、多くのビジネス部門スタッフをテクノロジーワークに専念させ、CIOやIT部門とより密接に協力し、一般的な組織の4倍の頻度でCIOとミーティングを行っているとのことだ。
「CxOをデジタル・ヴァンガードに育て上げるのもまた、デジタル・ヴァンガードであるCIOの仕事だ」と藤原氏は述べる。デジタル投資から優れたビジネス成果を生み出すには、CIOとCxOが互いに協力することが重要であり、CIOの成功にはCxOによるデジタル化の成功が不可欠なのだという。
そして、CxOがCIOとともにデジタル化を主導し、他部門の従業員がIT部門と連携してデジタル化を確立できる体制を整えることで、全社的なデジタル変革を推進しやすい環境が整うとし、そのためにCIOに求められる4つのアクションを、事例を交えながら紹介した。