【1】使いやすく魅力的なプラットフォームを提供せよ
デジタル基盤への投資の増加傾向を比較してみると、グローバルで最も増加が見られたのは「サイバー/情報セキュリティ」と「生成AI」で、ともに87%であった。一方、削減が顕著に見られたのは「レガシー・インフラストラクチャ、データセンター・テクノロジ」への投資で、43%の削減という結果になった。
この傾向は日本でも同様で、「生成AI」には91%、「サイバー/情報セキュリティ」には82%、「クラウドプラットフォーム」には80%の投資拡大が見られる一方で、「レガシー・インフラストラクチャ、データセンター・テクノロジ」は50%削減という結果に。この理由として藤原氏は、「多くの組織がレガシーシステムのマイグレーションを完了したからでは」と考察を述べた。
新たなデジタル技術は、IT部門だけで使われるものではない。職種を問わず様々な部門で活用されるべきだ。藤原氏によると、デジタル・ヴァンガードといえるCIOがいる組織では、ビジネス部門スタッフの約半数がテクノロジーの構築や管理に関わっているというが、そうでないCIOがけん引する組織では、その割合は26%にとどまっている。
CIOのアジェンダ①「使いやすく魅力的なプラットフォームを提供する」。藤原氏は、このアクションを体現する実例として、Verizon Global ServicesのEVP兼社長であるシャンカール・アルムガベル(Shankar Arumugavelu)氏が創出した「GenAIプラットフォーム・エクスペリエンス」を紹介した。
アルムガベル氏は、Verizon Enterprise GenAI Services Platform(VEGAS)の上に生成AIの設計パターンを構築し、全部門への生成AI実装を推進する生成AI CoE(センター・オブ・エクセレンス)のメンバーがいつでも活用できる環境を整えた。この生成AIの設計パターンは、アプリケーション開発に必要なAPIなどのコンポーネントを標準化したもので、生成AI CoEメンバーのアプリケーション開発効率向上に寄与している。
「2025年には、すべてのテクノロジストがより容易にデジタルプラットフォームを利用できるようにしなければなりません。これが、CIOの1つ目のアジェンダです」(藤原氏)
【2】アーキテクチャについての認識を浸透させよ
現代のビジネス環境において、テクノロジとビジネスの相互依存関係への注意は不可欠であり、非機能要件などへ配慮することの重要性が高まっている。
デジタル・ヴァンガードとなるCxOは、IT部門によるアーキテクチャ面でのサポートを特に重視しており、他のCxOと比較して各分野への要求度が顕著に高いという。具体的には、一般的な組織に比べてベンダー管理で1.6倍、エンタープライズ・アーキテクチャと総保有コスト(TCO)でそれぞれ1.5倍、サイバーセキュリティでは1.2倍の重要度を感じ、IT部門からのアドバイスを求めているようだ。
しかしながら、テクノロジの意思決定を下す際、ステークホルダーにアーキテクチャ的な思考を教えるエンタープライズ・アーキテクチャ(EA)チームが存在する組織は、わずか15%にとどまっている。
藤原氏は、CIOのアジェンダ②「アーキテクチャについての認識を浸透させる」の事例として、Teach For AmericaのEVP、最高デジタル/テクノロジ責任者であるアラン・マレー(Alan Murray)氏の取り組みを紹介した。Murray氏は他の人に対し、以下のような方法を伝授している。
- EA標準を設定:ITアーキテクトのように考える
- セキュリティ標準を設定:ITセキュリティ・プロフェッショナルのように考える
- IT支出をモニタリング:IT財務マネージャーのように考える
これを踏まえ藤原氏は、「2025年のCIOは、ビジネス部門がアジャイルに働けるように、すべてのテクノロジストがより容易にIT部門と協働できるような施策に取り組まなければならない」と訴えた。