アリックスパートナーズは、「テクノロジー業界の成長とパフォーマンス調査2024年版」を発表した。
同調査は、北米およびEMEAのテクノロジー業界の経営幹部約350名を対象に調査を実施。調査では、何を犠牲にしても目先の利益を追求する、というこれまで業界で顕著であった考え方は影を潜め、70%もの経営幹部が向こう12ヵ月を見据えて「持続可能な収益を創出していくこと」をより重視していることが明らかとなったという。その他のポイントは以下の通り。
- テクノロジー業界の経営幹部の75%はAIが将来の成長のけん引役になると見ており、90%が2025年もAI向けR&Dと設備投資が増えると予想
- テクノロジー業界の成長率は過去3年連続して減速基調をたどっているが、2024年も5%と減速。しかし、62%の経営幹部が目下、需要が再加速していると実感していることから、2025年には上向く可能性がある
- AI関連ビジネスの成功を判断する指標としては「収益成長」が最も重要とされているが、「プロセスの効率化」「コスト削減」「従業員の生産性」も上位に挙がった
- テクノロジー企業の3分の1が2024年の売り上げおよび利益目標を上方修正しているが、経営幹部の約25%が2025年には人員削減が必要になると予想
- 経営幹部の大多数は売り上げ伸び率よりも利益率を優先、あるいは同等に重要と考えている
テクノロジー業界全体の成長率の中央値は、2021年が20%、2022年が16%、2023年が7%と3年連続で鈍化、さらに2024年も5%まで落ち込んでいることから、業界への圧力は無視できないという。特に、SaaS企業は最も大きな打撃を受けていることが明らかになったとのことだ。
同調査から得られた最大の発見は、AIに賭けるには相応の忍耐が必要で、優先順位を転換しなければならず、さらに今後数年間で1兆ドル超もの設備投資を含む多額資金が必要であることを、経営幹部が認識しているということがわかった点だと同社は述べている。
AI投資から創出された実質的収益については、まだどの企業もほとんど明示できていないものの、経営幹部の76%は、AIが長期的成長の主なけん引役になるとみなしている。AI技術の活用方法に関しては、回答幹部の4分の1以上が「商業的なAIソリューションを既存製品に組み込む」ことが最優先と考えていることがわかったという。また、「ソフトウェア開発とエンジニアリングの生産性」「AIを活用した顧客サービス」「組織全体のワークフローの自動化」にAIを組み込むことを重要事項として挙げている。
一方、AIの利用や導入における不安や疑問の根幹は何かという質問に対しては、「データとプライバシーのセキュリティ」とする回答が最多に。その他の懸念事項として、「AI向け投資と他の成長分野や研究開発向け投資とのバランスをとること」「活用方法への準備とスケーラビリティ」「データの準備、スケーラビリティ、アーキテクチャ」「投資リターン」なども上位に挙がった。
経営幹部がAIイニシアチブの成功を測る指標は、「収益の伸び」が最も高く、「プロセスや効率の改善」「コスト削減」「従業員の生産性」も上位に挙がる結果となった。
また、パンデミック後に北米とEMEAで急増した従業員数は、AI開発資金の確保などの理由によりスリム化が行われた結果、減少傾向にあるという。同調査によると、同地域のテクノロジー企業の64%が2023年に従業員を削減。経営幹部のうち北米企業では、25%が今後数年間でさらなる人員削減を見込んでおり、37%がいまだ見通せないとしている。EMEA企業では、28%が追加での人員削減の可能性を見込んでおり、20%が見通せないとしていることがわかった。
テクノロジー業界では、収益をともなう成長を実現しなければならないというプレッシャーが高まっており、経営幹部の3分の1が2024年の売り上げ成長および利益目標の両方を引き上げていることが明らかとなった。なお、売り上げ目標を達成するためには既存顧客の売り上げを拡大させるとともに、AI対応の製品や機能が売り上げ拡大の推進力になると見込んでいるという。利益実現には、「AIを活用して社内プロセスを自動化すること」を第一に挙げ、次いで「製品やサービス・ミックスを効率的に変化させること」が続いた。他に明らかになったポイントは次のとおり。
- テクノロジー業界は2022年から2023年にかけて減速した後、ソフトウェアとSaaSおよびハードウェアとそのサービスの両面の需要が改善傾向にあり、景気循環的な需要圧力は緩和されつつある
- 25%弱の経営幹部が、今後の成長にはマーケット・デザインと新ブランド獲得に注力する
- 経営幹部の54%が、向こう12ヵ月でAI向け投資を10%以上増やすことを計画
- 経営幹部の83%はAIが自社のビジネス・モデルのディスラプションになる可能性があることを認める一方、2024年は社内プロセスの自動化にAIを活用している企業はわずか22%にとどまる
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