王子HD、1万人超が使うデータ分析基盤を整備──“後発”ゆえに先行企業の教訓を生かしてスピード導入
経営層が発した大号令!「Excel依存」によるデータ活用の後回しから脱却
DX以前のデジタイゼーションから 紙やExcelファイルが散在
EnterpriseZine編集部は、登壇した藤川氏と、Domo導入を進める小山和之氏(王子マネジメントオフィス[1] DX推進部 グループマネージャー)に取材の機会を得た。講演では語り尽くせなかった組織体制や取り組みの出発点、そして将来のAI・システム戦略について深掘りした。
[1] 王子マネジメントオフィスは王子ホールディングスグループのコーポレート機能を集約した会社
──藤川さんのこれまでのご経歴と、現在の王子ビジネスセンターにおける役割、DX推進部との連携について改めてお伺いできますでしょうか。
藤川氏: 1988年に王子製紙(現:王子ホールディングス)に入社し、情報システム部門に配属されましたが、その後、工場の事務部門で生産調整や原価計算などの管理業務を長く経験してきました。IT部門と事業部門を行き来しており、キャリアの半分は事業部門です。現在は、ホールディングス全体のDX推進責任者を務めつつ、IT子会社である王子ビジネスセンターの社長を兼任しています。
王子ビジネスセンターは、いわゆるIT子会社として、主に国内の上位システムの運用・保守をメインに担っています。DX推進部がホールディングス全体のデジタル化や施策を推進する組織であるのに対し、王子ビジネスセンターは技術サポートの立ち位置になります。DX推進部は王子マネジメントオフィスという会社に属しており、王子ビジネスセンターとは建屋も同じで、組織として一体感を持って活動しています。
──小山さんはDX推進部の発足時に異動されたと伺いました。
小山氏: はい。入社後、工場のシステム更新に携わった後、王子ビジネスセンターで約19年間システム業務に携わりました。その後、DX推進部が立ち上がることになり、異動しました。現在は、グループ内でのDX展開のための施策作りなどを担当しています。
──中期経営計画では新規事業創出も掲げられていますが、2024年2月のDX推進部立ち上げ時に期待された役割や、データ活用以外で取り組んでいる施策があれば教えてください。
藤川氏:発足当時は「足元のデジタル化が十分にできていなかった」という状態でした。正直なところ、DXというよりは、前段階の「デジタライゼーション」をまずしっかりやっていかなければならないという問題意識から出発しています。
経営層からは、データ活用に加えて、AIに対する高い関心が示されています。AIは世の中をドライブしていくインパクトのある技術であるため、AIを使って経営の近代化や効率化を実現していくことへの期待は非常に高いです。
──講演ではExcel文化が根強いというお話がありましたが、そもそもシステムデータ以外で「データ化できていない」という課題も大きかったのでしょうか。
藤川氏: それはかなりあります。システムデータ以外の、たとえば報告書ベースのデータ(品質、過去のトラブル、営業報告など)が、基盤の中に整備されておらず、個人のExcelシートや紙のファイルにバラバラに存在している状態でした。
個人が持つ情報資産は相当数、眠っていると考えられます。また、データ活用の進捗度やリテラシーについても、事業部門や組織、さらには個人によってまばらな状態です。リテラシーの高い人がいれば水準は引き上がりますが、そうでない組織では前近代的な姿が残っていることもあり、まったく均質ではありません。
──こうしたデータ活用の課題は、いつ頃から顕在化し始めたのでしょうか。
藤川氏:DXをやらなければいけないという投げかけがあったときに、顕在化しました。それまでは、分断されていてもなんとか会社は回っているという状況で、深刻な問題意識はなかったかもしれません。しかし、「この仕事のやり方でいいのか」という漠然とした危機感はあり、世の中のデジタル化の波に乗り遅れてはいけないという意識はあったと思います。
むしろ、経営層の方が世間に対して開かれており、危機意識が高かったと言えます。実務レベルでは、半径数メートルの世界で仕事をしているため、なかなか危機意識を持ちにくいのです。
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小山 奨太(編集部)(コヤマ ショウタ)
EnterpriseZine編集部所属。製造小売業の情報システム部門で運用保守、DX推進などを経験。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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