SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

最新イベントはこちら!

Enterprise IT Women's Forum

2025年1月31日(金)17:00~20:30 ホテル雅叙園東京にて開催

Security Online Day 2025 春の陣(開催予定)

2025年3月18日(火)オンライン開催

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けの講座「EnterpriseZine Academy」や、すべてのITパーソンに向けた「新エバンジェリスト養成講座」などの講座を企画しています。EnterpriseZine編集部ならではの切り口・企画・講師セレクトで、明日を担うIT人材の育成をミッションに展開しております。

お申し込み受付中!

EnterpriseZine(エンタープライズジン)

EnterpriseZine編集部が最旬ITトピックの深層に迫る。ここでしか読めない、エンタープライズITの最新トピックをお届けします。

『EnterpriseZine Press』

2024年秋号(EnterpriseZine Press 2024 Autumn)特集「生成AI時代に考える“真のDX人材育成”──『スキル策定』『実践』2つの観点で紐解く」

EnterpriseZine Press

2025年に日本企業が「江戸期」から脱却するためにとるべき戦略とは?──ガートナー亦賀氏が語る

「ガートナー ITインフラストラクチャ、オペレーション & クラウド戦略コンファレンス」レポート

 「日本企業は江戸期から脱却せよ」「ベンダーやSIerの見積もりを鵜呑みにするな」「管理職もクラウド認定資格を受けよ」──こう語るのはガートナージャパンの亦賀忠明氏だ。その上で、ニューワールド企業へと転換するための実践的な道筋を、2025年から2030年までのスパンで示した。2024年12月に開催された「ガートナー ITインフラストラクチャ、オペレーション & クラウド戦略コンファレンス」セミナーの内容を紹介する。

日本企業は江戸期から脱却せよ

ガートナージャパン リサーチ&アドバイザリ部門 ディスティングイッシュト バイス プレジデント アナリスト 亦賀忠明氏
ガートナージャパン リサーチ&アドバイザリ部門 ディスティングイッシュト バイス プレジデント アナリスト 亦賀忠明氏

 「クラウドコンピューティングは本当に使えるのか」「果たして安全なのか」「コストが高すぎるのではないか」。こうした質問が、ガートナージャパンの亦賀忠明氏にいまだに寄せられているという。これらは一見もっともらしい懸念に思えるが、実際にはすでに解消されている疑問だ。それにもかかわらず、このような古い認識が、日本企業のデジタル変革を大きく妨げている。

 亦賀氏は、このような状況を「日本企業が黒船来航前の江戸時代にとどまっている」と表現する。このままでは、新しい時代である「明治」に移行することなく、競争力を失ったまま取り残されてしまうという危機感を彼は強調する。「今だに『クラウドは使えるのか』と質問してくる方は、20年ぐらい後ろを走っていると思っていただいたほうがいい」と亦賀氏は語る。

 亦賀氏によれば、日本企業は世界的なデジタル競争において遅れを取っており、このままでは2030年以降、多くの企業が急速に衰退し、消滅する可能性すらあるという。その背景には、日本企業全体として新しい技術への理解や適応力が不足している現状がある。特に経営者層や管理職層による意識改革が進んでおらず、その結果として技術導入や運用プロセスも停滞している。

出典:Gartner (2024年12月) [画像クリックで拡大]

トラディショナルベンダーやSIerの見積もりを鵜呑みにするな

 亦賀氏は、「すべての企業がそうであるとは限りませんが」と前置きしつつ、日本企業経営者や管理職層の一部には依然としてクラウドコンピューティングについて根本的な誤解を抱えており、その結果としてデジタル革命への移行が阻害されていると指摘する。

 具体的には、「クラウドは安全ではない」「コストが高すぎる」といった懸念や、「クラウドとは単なるホスティングサービスだ」という誤解、「オンプレミス環境を少しずつ改善すれば十分だ」という過信などが挙げられる。これらはいずれも、日本企業全体として新しい技術への理解と適応力が欠如していることを象徴している。

 特に指摘したのが、「クラウドコスト」に関する認識の浅さだ。「クラウドは高い」という意見はいまだ多く聞かれる。しかし亦賀氏によれば、その評価自体が不適切だという。クラウドは多くの機能群の集積で、単体のコスト比較は意味がない。コストを判断するためには、徹底的な理解が必要だ。

 「例えば、AWSには693種類ものインスタンスがあります。その価格差は最小6,622円/年から最大1億6,000万円/年まで広範囲です。どれを選ぶかによってコスト構造は大きく変わります」と亦賀氏は具体例を挙げて説明する。このようにクラウドコストは選択肢次第で大きく変動するため、一概に「高い」「安い」と評価できるものではない。

 重要なのは、自社システム規模や将来的な拡張性など具体的なニーズに応じて最適解となるサービスを選択することだ。しかし、この判断プロセスについて多くの場合、日本企業ではトラディショナルなベンダーやシステムインテグレーターに丸投げされてしまうケースが多いという。「ベンダー任せになることで、不必要に高額な見積もりやオーバースペック提案を鵜呑みにしてしまい、本来不要だった数十倍ものコスト負担につながるケースもあります」と亦賀氏は警鐘を鳴らす。

 セキュリティへの不安についても、クラウドに対する大きな誤解の一つだ。「クラウドには、それを駆使できるプロフェッショナルが必要です。さもないと、セキュリティや稼働率は保証できません」と亦賀氏は指摘する。しかし適切な設計と運用によって、クラウドであっても99.999%稼働率(ファイブナイン)を満たすアーキテクチャによる「止まらない」システム構築は可能だという。

 ただし、そのためには徹底的に新しいスキル、マインドセット、そしてスタイルが必要になる。従来型オンプレミス運用やウォーターフォール型開発手法では限界があり、新しい開発・運用手法へ移行しなくてはならない。例えばCI/CDパイプライン(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)など、新しい仕組みへの対応も求められる。

次のページ
ニューワールド企業への移行のための段階的アプローチ

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
EnterpriseZine Press連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)

ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail : k...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

EnterpriseZine(エンタープライズジン)
https://enterprisezine.jp/article/detail/21174 2025/01/09 08:00

Job Board

AD

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング