三井不動産と東日本電信電話(以下、NTT東日本)は、スマートビルディングの実現や新たな街づくりに向けたサービス提供を目指し、2025年1月より東京ミッドタウン八重洲において、ローカル5Gを活用した大規模複合施設向けデジタルツインの実証実験を開始した。
デジタルツインは、リアルタイムで収集するデータを基に、仮想空間(デジタル)に現実世界と双子(ツイン)のようによく似た世界を再現・構築するテクノロジー。東京ミッドタウン八重洲では、大規模施設運営における配送や運搬の人手不足などへの解決に資するものとしてロボット活用を積極的に推進しているという。
各社の役割
- 三井不動産(東京ミッドタウン八重洲):同実証の全体統括、実証環境の提供、施設運営
- NTT東日本:ローカル5G環境・デジタルツイン環境・ロボットデリバリーシステムの構築、ARアプリケーションの開発・構築、技術実証
同実証の概要
高速大容量伝送が可能なローカル5G環境下では、膨大な画像データを素早く処理することで、三次元点群データと画像データを組み合わせたデジタルツインを短時間でクラウド上に構築できるという。デジタルツインは、スマートフォンなどによる簡易な更新が可能であるほか、VPS(Visual Positioning System:画像情報を利用した位置特定システム)を利用した位置測位も可能。これにより、GPSの電波が届きにくい屋内においても位置特定が可能となり、様々な場面での活用が期待できるとしている。
同実証においては、デジタルツインのマルチサービス活用における構築方法や更新性、拡張していく場合の課題などの整理・解決を図るとのことだ。
①「クラウド接続型デリバリーロボット」の導入
ロボットがデジタルツインなどを活用して自立的に動作する「クラウドロボティクス」の実装に向けて、従来のように個々のロボットで頭脳を持つのではなく、クラウド上で移動制御などを行う「クラウド接続型デリバリーロボット」(以下、デリバリーロボット)を導入。デリバリーロボットは、クラウド上のデジタルツインを地図として用い、VPSによる位置測位を行うことで、自身の現在地を正確かつリアルタイムに把握するとともに、デジタルツインが更新された際には即時にすべてのデリバリーロボットの経路に反映するという。また、互いの位置を把握した上での移動制御も可能であり、建物内において100台規模のデリバリーロボットを集中制御・管理できるとしている。その際、ロボットはクラウドとの間で画像をリアルタイムに伝送しながら広範囲なエリアを移動する必要があるため、ローカル5G環境は有効であり、シームレスな移動を実現できるという。
このような特徴を持つデリバリーロボットを、建物内のセキュリティやエレベーター制御システムと連動させることで、施設内の飲食店からオフィスワーカーへスムーズな配送を実現し、ワーカーの利便性と快適性に寄与するとのことだ。
②デジタルツイン適用サービスの拡大
クラウド上に構築したデジタルツインを活用し、来館者の施設内における目的地までのスムーズなナビゲーションを実証予定。加えて、AR(拡張現実)上で館内店舗の商品紹介やクーポンを表示するプロモーションを行うなど、来館者への新たな施設体験を創出するという。また、AR表示するデバイスとして、スマートフォンやタブレットだけでなくNTTコノキューデバイス製XRグラス「MiRZA(ミルザ)」を活用し、XR(クロスリアリティ)とデジタルツインとの連携も検討・実証していくとしている。
今後の展望
将来的には人材不足が課題であるビル管理への活用、加えて街全体にデジタルツインを拡張し、高精度シミュレーションによる人流分析や災害対策への活用などを視野に入れ、新たな街づくりへの貢献を目指していくとのことだ。
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