NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)は1月14日、量子コンピューターでも解読できない暗号通信システムの実証実験に世界で初めて成功したことを発表した。今回の実証では、IOWN PETsの技術要素である耐量子セキュアトランスポートと、NTT Com独自の特許技術を組み合わせることで、鍵供給を含めたシステム全体での安全な暗号通信を実現している。
2030年頃には実用的な量子コンピューターの登場が予想されており、現在使用されている暗号技術による通信の解読が現実的な脅威となってきている。今回のNTT Comによる実証実験は、このような課題に対する具体的な解決策を示すもの。IOWN PETsの技術要素である耐量子セキュアトランスポートの鍵交換機能をNTT Comのクラウドシステム上に実装し、さらにNTT Com独自の特許技術を活用することで、鍵供給時の安全性も確保している。
本実証実験の特筆すべき点は、理論的な実証にとどまらず、実用的なアプリケーションレベルでの検証まで行っていることだ。具体的には、NTT Comが提供するビデオ・音声通話開発ツール「SkyWay」を活用し、Web会議システムに次世代暗号技術を組み込んでいる。
実証システムでは、複数の耐量子計算機暗号(PQC)を利用した鍵交換機能を実装している。これにより、将来的にいずれかのPQCの脆弱性が発見された場合でも、暗号方式を入れ替えることで安全性を維持できる設計となっている。さらに、Pre-Shared Key(PSK)を活用した独自の特許技術により、共通鍵の安全な供給を実現している。
本実証実験の成功を受け、NTT Comは次世代暗号通信技術の商用化に向けた取り組みを本格化させる方針だ。具体的には、PQCやQKD(量子鍵配送)といった量子コンピューターに対して安全な暗号技術と、IOWN技術、データ解析技術などのNTT Comのサービスを組み合わせたソリューションの開発を進めていく。
特に、金融機関や医療機関など、機密性の高いデータを扱う業界との連携を強化し、量子コンピューター時代に向けた具体的なユースケースの創出を目指している。
今回の実証実験の成功は、量子コンピューター時代における情報セキュリティの新たな可能性を示すものとなった。実用的なアプリケーションレベルでの検証まで実施されたことで、次世代暗号通信の実用化に向けた大きな一歩となることが期待されるという。