ブラックボックス化したITサービス運用の限界
経済産業省が公表したDXレポートによると、多くの国内企業は既存システムの問題点として各事業が個別最適化を優先してきたために、企業全体の最適化が図られなかったと指摘しています。DXレポート2.1では「低位安定」という表現を用いて、委託によるコスト削減を目指すユーザー企業と、受託による低リスク・長期安定ビジネスの享受するベンダー企業の双方がデジタル時代の敗者となる危機感を述べています。
ベンダー企業にITサービス運用を委託したことで、システム構造や業務内容がブラックボックス化され、経営のアジリティが低下することを危惧した一部のユーザー企業は内製化を推進。ベンダー企業に依存しないITサービス体制を選択しています。実際に、情報処理推進機構(IPA)が公表する「DX動向2024」では、「内製による自社開発」はすべての対象事業・システムにおいて増加傾向です。特に「アジリティ(機敏性)を重視するシステム(短期かつ継続的にリリースするシステム)」および「低コストであることを重視して導入するシステム」は顕著に増加しています。
しかしながら、ユーザー企業が内製化を進める上での課題として、「人材の確保や育成が難しい」という回答率は87.4%と突出して高いです。2030年には最大79万人のIT人材不足が見込まれている中で、日々進化するIT技術を陳腐化させずに各ユーザー企業に適用するスキルの育成は一朝一夕に実現できるものではありません。適切な人材配置を行わない内製化は目的を見失う恐れがあるため、ベンダー企業がユーザー企業に伴走し、最新化されたIT技術を提供してビジネスの価値を向上させる共創型のITサービス運用が重要です。
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出典:独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2024」
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