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運用現場のモダナイズ~複雑・サイロ化への処方箋~

個別最適の現場から反発されずにトップダウンによるモダナイズを遂行する“社内コミュニケーション術”

第3回:IT運用のモダナイズの推進で生じる課題に対するコミュニティアプローチ

 大規模なIT運営のモダナイズにはトップダウンのアプローチが必要になりますが、現場の個別最適な管理と折り合いが付かず、ユーザー部門との信頼関係に悪影響を及ぼす可能性があります。大規模なモダナイズの投資の過程で、信頼関係に影響をきたすことは推進を阻むことにもなりかねません。ボトムアップのアプローチで育まれた運用品質を維持しながら、高度な運用を実現するためには、各運用現場をコミュニティとして再統合し、トップダウンとボトムアップの橋渡しをする“新しい形”が必要です。この記事では、モダナイズを成功させるためのコミュニケーション手法やコミュニティ形成方法を紹介します。

個別最適で育んできた品質を維持しながらモダナイズするには?

 IT運用現場のモダナイズにおいて、各現場の個別最適と向き合うことが必要です。モダナイズにおいて、新しいテクノロジーを導入するためにサービスや製品を選定する必要がありますが、統一された製品やサービスを使用することは、各現場の個別運用を標準的な方法に変え、新たな制約を課すことになります。一般的に運用はコストセンターと考えられ、モダナイズ施策はスケールメリットが重要視されるため、統一された製品やサービスの採用は当然の選択といえます。個別最適との衝突は避けられない課題です。

 しかし、標準化により、既存のIT運用が持つ細部まで配慮の届いた管理を継続できなくなることは、ユーザー部門や顧客との信頼関係に悪影響を及ぼしかねません。ボトムアップで作り上げられ、長い年月をかけてシステムの特徴に合わせて最適化を継続してきた結果、現場の組織の役割分担や関連会社や顧客との契約内容にまで及ぶエコシステムを形成していることもあります。

 その状況下で、DXや運用モダナイズのプロジェクトの名のもとにトップダウンで決定された製品・サービス採用や標準化の号令が到来したとき、現場はどうなるでしょうか。それまで提供していた品質や個別実装の機能性が網羅されているはずもなく、現場のニーズとのミスマッチから間違いなく反発を招きます。特に、個別実装と癒着したSLA(サービス水準合意)が定義されている場合、ユーザー部門との信頼関係に悪影響を及ぼすため受け入れられないという状況が生じ、モダナイズに対応せずに旧態運用が残り、限定的なモダナイズに陥る可能性があります。

 本来、こういった全体最適は移行期間として数年をかけて緩やかに行うのが望ましい改革の姿です。ただ、企業のビジネスリーダーが四半期単位での結果を求める場合、現場は既存品質の維持と新たなテクノロジーへの対応の間で葛藤が生じます。または、そのような状況の発生が明らかであるため、IT運用現場のモダナイズに踏み出せない現実も多くのIT運用のモダナイズ提案で見てきました。

 この避けて通れないトップダウンでの推進課題に対して、ボトムアップアプローチや個別最適で育まれた運用品質を維持しながら、新しい高度化運用を実現するには実態としてどのように対処するべきでしょうか。一般的には、リーダーシップやCoE(Center of Excellence)の設置、さらには「継続的なコミュニケーション」「柔軟性のあるアプローチ」「トレーニングとサポート」が重要といった提言がなされます。本稿では、そうした活動を深堀りし、実際にどのようなコミュニケーション手法を用いて、コミュニティを形成していくのか、グローバル企業で実践している対策を紹介していきます。

次のページ
外資グローバル企業に学ぶ、トップダウンのアプローチ手法

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この記事の著者

南波 邦雄(ナンバ クニオ)

キンドリルジャパン株式会社 プリンシパル・アーキテクト。基盤の管理請負サービスにてサービス価値を高めるIT運用システム群及びその共通基盤の設計・開発・展開を担当。ITSMプロセス、ServiceNow、IBM運用系製品の技術と設計開発を経験。現在、運用系オープンソースをコンテナ化しクラウドネイティブ...

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