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IFRSに立ち向かう!~会計理論からかんがえるシステムの話(後編)

後編

IFRSの影響は個社にとどまらずグループ企業全体に及ぶ。グループ全体での会計処理と財務報告の標準化が求められているのだ。それを実現するには会計を中心したシステムの全体最適が必要である。自社グループに最適なIFRSに対応するシステムの実装手法の考え方を、最新のITソリューションと会計の基礎理論の双方から考察する。

会計の基礎理論から考える

 かつての会計業務は、単体会社の取引を記帳し、決算書を作成することが目的だった。しかし IFRS時代はグループという範囲でマネジメントアプローチに必要な情報すべてを記帳し、財務報告をしなければならない。つまり、取引を処理するだけの業務から、取引から発生するマネジメント情報を保持し、経営の意思決定も支援し、グローバル資本市場に説明責任を果たすことに目的が変わってきているのである。

 つまり、会計の基礎理論からは「単体会計からグループ会計へ」「制度会計から制管一致会計へ」という2つの論点を考慮しなくてはならない。データのボリュームは、「単体会計で制度会計」から「グループ会計で制管一致会計」になり劇的に増加する。したがって、会計データの持ち方が重要になる。この会計データの持ち方は会計システムの設計思想そのもので、アーキテクチャを決定づける。

 その思想は伝票会計方式か帳簿会計方式の2つに大別される。伝票会計は取引の都度、伝票に取引の内容を記録し、1つの大きな器、大福帳に取引順に書き連ねていく。大福帳は江戸時代の商家で使われていたのがはじまりだとされている。大福帳には、たとえば、いつ、誰に、いくら、何を売ったのかが1つのレコードで記録される。得意先元帳と現金出納帳が一緒になったデータ群である。システム視点ではこの大福帳を支えるのは巨大なフラットファイルであったり、階層型データベースである。

 大福帳型データベースに立脚する伝票会計は、メインフレーム時代のフラットファイルが設計思想の根幹にあるので、リレーショナルデータベースを十分に活用しきれていない。使ってたとしてもデータモデリングが不十分なため、データ構造がブラックボックスだったり、データ構造を公開できない場合もある。インプット優先の発想なので後から、データを検索したり有効利用するという発想は希薄である。

 この巨大なデータプールの中からデータを抽出、総勘定元帳を作成し、制度会計上の財務諸表を作成する。管理会計を行うには別にデータマートを構築し、伝票情報以外の情報もそに集める必要がある。

 この仕組みは、かつてのように、対象が単体企業で、制度会計上の報告セグメントも少なく、階層も浅ければ対応できた。しかし、IFRS時代では扱うデータ量が飛躍的に増加するので、データを正規化して格納した方が効率的である。そこで、有用性が高まってきているのが帳簿会計である。

次のページ
帳簿会計のメリット

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この記事の著者

桜本 利幸(サクラモト トシユキ)

日本オラクル株式会社 アプリケーション事業統括本部 担当ディレクター。ITコーディネータ、公認システム監査人、法政大学大学院兼任講師、日本CFO協会主任研究員、After J-SOX研究会運営委員。都市銀行にて企業金融、ストラクチャードファイナンス、商品開発に従事後、1998年4月 日本オラクル株式...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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