大量、多様、かつ、リアルタイム性が高いデータの活用によりビジネス上の価値を得るという「ビッグデータ」の概念の正当性には議論の余地はない。しかし、企業が実際に「ビッグデータ」戦略を推進する際に、あまり本質的ではないテクノロジーの議論に惑わされてしまうケースが見られる。重要なポイントは「ビッグデータ」において何が従来の延長線上なのか、何が新しい要素なのかを見極めることだ。
「ビッグデータ」とは何なのか?
現時点におけるIT業界の最重要キーワードのひとつが「ビッグデータ」であることに異論は少ないだろう。そして、あらゆるIT 業界のキーワードと同様に「ビッグデータ」の定義は人により様々である。単に大容量のデータを「ビッグデータ」と呼ぶことも多い。さらには、さほど大容量のデータを扱っていなくても、とにかくデータ中心型のアプリケーションであれば「ビッグデータ」と呼んでしまうというケースすらあるので注意が必要だ。
本記事では、「大量、多様、かつ、リアルタイム性が高いデータ」という最も一般的と考えられる「ビッグデータ」の定義に基づいて議論を進めたい。つまり、Volume、Variety、Velocity という「3 つのV」の特性を持つデータを「ビッグデータ」と呼ぶということだ(図1)。なお、単なる大量データという意味ではないことからカッコ付で「ビッグデータ」と表記することにしたい。

本来的には、「ビッグデータ」の応用は、データ分析だけに限定すべきではなく、データ配信(典型的にはメディア・ストリーミング)やデータ保存(典型的にはコンテンツ管理)も「ビッグデータ」の応用に含めて考えるべきだ。とはいえ、本記事では誌面の都合上、データ分析を中心として議論を進めていきたい。
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栗原 潔(クリハラ キヨシ)
株式会社テックバイザージェイピー 代表、金沢工業大学虎ノ門大学院客員教授日本アイ・ビー・エム、ガートナージャパンを経て2005年6月より独立。東京大学工学部卒業、米MIT計算機科学科修士課程修了。弁理士、技術士(情報工学)。主な訳書にヘンリー・チェスブロウ『オープンビジネスモデル』、ドン・タプスコッ...
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