競争の激しい菓子業界において次々と新商品をヒットさせてきたカルビー。そこには、揺るぎない経営視点に基づき、自らを改革し続けてきた真摯な企業の姿がある。その組織風土はどのように構築され、醸成されてきたのか。前代表取締役社長兼CEO/CIOの中田康雄氏に、カルビーにおける企業改革の実践から考えるITとデータ活用の意義、企業の経営戦略や組織のあり方についてご提言いただいた。
経営戦略設計を阻害する”経営層の怠慢と思い込み”

――厳しい経済環境におかれ、改革の重要性を認識しながらも、多くの日本企業では、実行に移すことができていないと言われています。その理由はなぜだと思われますか。
経営層が経営戦略の大切さを十分に認識していないこと。やはり、それに尽きると思います。日本企業の傾向として、ほとんどの現場は必死に工夫しながら取り組んでいます。しかし、経営層から示されるのは数値目標ばかり。厳しい時代ですから、売上や利益に目が行きがちなのは仕方ありませんが、それ以前にノルマや売上高といった目標を立てることが経営戦略の設計だと勘違いしている経営層が案外多いのです。
本来、経営層の最も重要な仕事は方向性を示すことです。そして、その先にある目標に達成すべく仮説を立て、検証して実現度を把握し、現場と共有することです。目標を丸投げして、達成したかどうかだけが関心事なんてとんでもない。もし実現度が低い場合は、どうしたら実現するのか手立てを考えるべきであり、現場任せの精神論に委ねているとしたら、経営者として手を抜いているとしか言いようがありません。
戦略設計において重要なのは、何より「実態の把握」だと思います。どれだけのエネルギーを割いて、どれだけ深く顧客、環境、現場といった様々な実態ににじり寄ることができているか。それではじめて課題が浮き彫りになり、戦略がふつふつと湧いてくるのです。一方、実態の把握を阻害するのは、怠慢さ、そして従来から続く固定概念です。「こんなもんだ」「こうであるはず」という思い込みが実態を覆い隠し、結果として経営的課題を隠すことになっているのです。
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伊藤真美(イトウ マミ)
フリーランスのエディター&ライター。もともとは絵本の編集からスタートし、雑誌、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ビジネスやIT系を中心に、カタログやWebサイト、広報誌まで、メディアを問わずコンテンツディレクションを行っている。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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