30周年迎えたSOLIDWORKS 「3D CAD」進化の先にあるものは
ダッソーはプロダクトデザインやシミュレーション、製造などの領域に向け、3D関連製品を提供するソフトウェア企業。SOLIDWORKSは3D CAD、3DEXPERIENCEプラットフォームはその土台と製品だ。今年開催された3DEXPERIENCE World 2025は、これらの製品ユーザーを対象としたイベントで世界79ヵ国から約4,000人、オンラインからも多数の参加があった。
また今年は、SOLIDWORKSのリリースから30周年を迎えた節目の年でもある。同社 ジャン・パオロ・バッシ(Gian Paolo Bassi)氏は、「当時は設計がボトルネックになっており、時間とリソースを費やしながらプロトタイプの製作、フィールドテストと進めていた。その中には、不必要なプロセスもあった」と振り返る。そこでSOLIDWORKSは、3D CADによるボトルネックの解消を図ったという。

そして現在の製造業は「より良い製品を安価かつ高速に、パーソナライズを加え、持続性も考慮して製造する」という大きな課題に直面するまでになった。熟練者の不足、脆弱なサプライチェーン、インフレによるコスト増、サイバーセキュリティのリスクなど、事業を取り巻く環境も厳しい状況だ。

では、新たな局面を迎えたダッソーはどのように支援できるのか。
2024年1月にCEOに就任したパスカル・ダロズ(Pascal Daloz)氏は、「ジェネレーティブ・エコノミー」という言葉で我々が向かっている時代を形容する。

ダッソー・システムズ 最高経営責任者(CEO)Pascal Daloz(パスカル・ダロス)氏
2024年の3DEXPERIENCE Worldには姿を見せなかったため、同イベントがCEOとしての初登壇となった
製造業は2040年に向けて「自然からインスピレーションを受け、これまで以上にスマートで廃棄物の少ない製品を設計する」世界に移行する、とダロズ氏。将来的には「地球上のあらゆるもの、あらゆる人のバーチャルツインを作成し、設計やエンジニアリング、製造などのナレッジとノウハウを活用しながら作業する。これにより設計の効率性が高まるため、市場拡大にもつながる。『データ』が新たな通貨となり別のデータを生みだし、活用し、保護する」と続ける。

ダッソーは、このジェネレーティブ・エコノミーを「サーキュラー・エコノミー(循環経済)」と「エクスペリエンス・エコノミー(体験経済)」の融合と位置付ける。ジェネレーティブ・エコノミーの実現に向けて、同社が2025年2月初頭に打ち出したのが「3D UNIV+RSES(3Dユニバース)」だ。
3D UNIV+RSESは、3D CAD、DMU(デジタルモックアップ)、PDM(製品情報管理)、PLM(製品ライフサイクル管理)、バーチャルツイン……と製品を進化させてきた同社にとって7世代目にあたる。同製品では、“AIによるマジック”を多くの人が使いこなせるようになることを目指す。
「複雑なテクニックを利用できるようになり、これまでよりもパワフルかつ効率的に、革新的なものとなる」(ダロズ氏)

また、こうした新製品には従来からの差別化戦略も生きてくる。「AIが機能するためには『コーパス』が必要だ。我々には業界最大かつ最も構造化された“業界別のコーパス”がある」とダロズ氏。37万もの顧客数を誇る同社製品を8万5,000人の個人ユーザー、2万5,000社のスタートアップが利用し、1100万人の学生が製品トレーニングを受けていると胸を張る。
さらに、これまでのように知的財産の保護に注力しながら、AIの活用も続けていく。3DEXPERIENCEプラットフォームでは、アセンブリやデザイン、テスト、検証などのプロセスをAIによって自動化する「ジェネレーティブ・エクスペリエンス」を搭載。イベントで発表された「AURA」など、用途特化型の多数の“バーチャルコンパニオン(AIエージェント)”で勝負をかける。