
Roshan Shetty Co-Founder/Owner, CitiusCloud [India]
Ashutosh Deuskar Owner, VDA Infosolutions [India]
伊藤忠テクノソリューションズ 情報通信事業企画室 管敏浩氏 [Japan]
Nutanix APJは3月27日、オーストラリア、インド、日本からパートナー企業の代表者を招いた記者説明会を開催した。VMwareのBroadcomによる買収から1年以上が経過し、企業のIT戦略がどのように変化しているかについて、各国パートナーからの声が共有された。モデレーターを務めたNutanix APJのパートナーセールス担当副社長Michael Magura氏は、「AIアプリ開発の隆盛とクラウドの普及という大きなトピックに焦点を当てたい」と述べた。また、「リスク軽減も大きなトピックであり、Broadcomの買収によって多くの顧客が今後の戦略を見直している」と現状を整理した。
各国とも、IT環境の複雑化が進む中、企業のインフラ投資の優先順位は大きく変化している。インドのSidious Cloudの共同創設者Roshan Shetty氏は「顧客はアプリケーションをオンプレミス、クラウド、エッジなどどこで実行すべきか判断する必要があり、そこにAIが加わることでさらに複雑になっている」と指摘した。
特にジェネレーティブAIが2025年の主要イニシアチブとなる中、Shetty氏は「顧客がジェネレーティブAIの旅をナビゲートできるよう、高パフォーマンスでスケーラブルなプラットフォームを提供するため、主要OEMと戦略的提携を進めている」と語った。
同じくインドのVDA InfosolutionsのAshutosh Deuskar氏は、従来のインフラがAIや最新アプリケーションには不十分であるとした上で、「スケーラビリティ、セキュリティ、パフォーマンスの向上に投資し、AI駆動アプリケーションをシームレスに利用できる環境を提供している」と述べた。
特にインドでは顧客からの評価が高いのは、Nutanixの予測分析機能だという。「お客様は業務に大きな影響が出る前に潜在的な問題を早期発見でき、これにより予測、最適化、信頼性向上が可能になる」とDeuskar氏は説明した。
各国のパートナーたちが強調したのは、企業のアプリケーション開発がコンテナ化とクラウドネイティブアーキテクチャへと急速にシフトしていることだ。オーストラリアのThink SolutionsのPedro Duarte氏は市場の変化を次のように説明した。
「顧客は当初、クラウドへの移行を試みましたが、多くが苦戦し、一部はオンプレミスに戻りました。彼らが移行しようとしていたアプリの多くはコンテナ化されていないレガシーアプリだったのです。現在、多くの顧客はアプリをコンテナ化することに投資し、クラウドとオンプレミスの間を自由に移動できるようにしています」
2025年の市場動向について、Shetty氏は「コンテナ化が急速に普及し、顧客はジェネレーティブAIのユースケースを本番環境に展開してビジネス成果を向上させるだろう」と予測。「2010年にVMが物理サーバーの数を上回ったように、コンテナはいつか仮想マシンの数を上回る」と述べた。
生成AIについては、トークンコストが70%低下していることが普及を後押しするとShetty氏は分析。「ビジネスのあらゆる機能でジェネレーティブAIを活用できる。コスト低下が採用を加速し、より多くのビジネスチャンスをもたらすだろう」と語った。
日本市場の視点からは、伊藤忠テクノソリューションズ情報通信事業企画室の管敏浩氏が「2024年は日本企業がジェネレーティブAIのプラットフォーム構築に集中した年だった。2025年はそのプラットフォーム上にどのようなサービスを提供するかが焦点となる」と展望を共有した。
Magura氏はNutanixがD2IQ買収で強化したKubernetesプラットフォーム(NKP)について言及。「このテクノロジーは、仮想化されたワークロードもKubernetesのクラウドネイティブワークロードも、オンプレミスでもクラウドでも、すべてをサポートする統合基盤を提供できる」と説明した。
VMwareからの移行リスク軽減
VMwareのBroadcom買収から1年が経過し、企業のリスク軽減戦略は進化している。Duarte氏によれば、小規模企業は「より機敏に動け、マルチベンダー戦略を積極的に採用している」一方、大規模企業は「環境が大きいため移行が難しく、将来の混乱に備えた長期的なリスク軽減計画を立てている」という違いがある。
Deuskar氏は、インド市場では大規模な移行プロジェクトが進行中で、「30,000〜40,000コアという規模の移行も行われている」と紹介。「Nutanixは異なるクラウド環境で動作するため、ベンダーロックインを削減しながらビジネス継続性を維持できる」と評価した。
パネリストたちは、Nutanixが不確実性の中で顧客をどのように支援しているかについても言及した。管氏は「日本においてもNutanixは仮想基盤の移行先筆頭候補となっている。日本の顧客は仮想基盤に厳しい要件を求めるが、Nutanixはそれらすべてに応えている」と述べた。
特に「Nutanix Move」という移行ツールの価値を強調し、「仮想マシンのダウンタイムを最小限に抑えて新基盤へ移行できる」点を評価した。Duarte氏も「Nutanixは選択の自由を促進している。VMwareからAHVへの移行ツールを提供し、また『Move』を使えばクラウド、VMware、さらには他のプラットフォームへも簡単に移行できる」と述べた。
最後にDeuskar氏は「シンプルさこそが天才である」というNutanixの創業者の言葉を引用。「Nutanixの強みは移行を簡素化したこと。新技術採用の学習曲線が数か月ではなく数週間で済む」と指摘した。
本会見では、企業がクラウドネイティブとAI対応インフラへの移行を進めながらも、ベンダーロックインのリスクを軽減するため、シンプルで柔軟なアプローチを求めていることが明らかになった。ジェネレーティブAIの実用化とコンテナ化の加速が予想される中、企業のレジリエンス構築とイノベーション推進の両立が、ITインフラ戦略の鍵というのが各国パートナーの共通認識だった。