
2025年、「AIエージェント」が日本でも浸透してきた。市場には多くのベンダーが勃興する中、企業における担当者はどのように状況を俯瞰すればよいのか。本稿では、「Forbes 30 Under 30 Asia 2024」に選出された、栁澤直氏が“AIエージェントの最前線”をリポートする。
市場が一気に開花:法務・開発で大型資本が流入
2025年、生成AIの主役は汎用チャットボットから業務特化型エージェントへと急速にシフトした。背景には、法務や開発などの専門領域で「人では追いつけない情報量とスピード」が求められる現場の切実なニーズがある。Harvey AIが3億ドルを調達してリーガルテックの本命に躍り出たニュースは、その象徴だ。そのわずか3ヵ月後には開発支援ツール「Cursor」を運営するAnysphereが9億ドルの大型ラウンドを成立させ、評価額90億ドルに到達。日本でもAlgomaticがHR領域でAIエージェント「リクルタAI」を本番導入し、書類選考を60%短縮した事例を公開したほか、開発AIエージェント「Jitera」は、コードリポジトリを解析して設計書を自動生成するリバースエンジニアリング機能、社内ドキュメントのアップロードによるファインチューニングなしでの学習を可能にするDocs機能を備えるなど、ソフトウェア開発における業務効率化を後押ししている。
モデルは多様化の時代へ:万能型から適材適所型へ
こうした資本流入を後押しするのが、モデルの多様化だ。2025年4月末に正式リリースされた「GPT-4o」は画像・音声・テキストを同時に高速処理し、従来のGPT-4を置き換えた。さらにOpenAIはステップバイステップの内省的推論を特徴とする「o3」を公開し、複雑な要件を論理的に解きほぐす性能を前面に打ち出した。一方、「GPT- 4.1 / 4o mini」や「Mistral-MoE」などの軽量モデルや自然言語処理に特化したLPU(Language Processing Unit)は、FAQやチャットボットのような低レイテンシ業務に最適化されている。「一つの巨大モデルでなんでも処理する」時代は終わり、ユースケースに応じてモデルを組み替える設計思想がIT部門のガイドラインに組み込まれはじめた。
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栁澤 直(ヤナギザワ ナオ)
1994年生まれ。慶應義塾大学在学中にソフトウェア開発企業を設立。大型のIPOやM&Aを果たした急成長中のスタートアップを中心に開発業務に従事する。新卒でリクルートホールディングスに入社しSUUMOの開発を担当。2017年に株式会社Jiteraを設立。急成長中のスタートアップ、IPO前後、売...
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