DXは共感から始まる──泥臭い「説明と関係構築」が変革を導く
井無田:ここからは、たくさんの企業のDXやオペレーション改革を支援しているからこそのご意見をいただきたいです。黒﨑さんから見て、バックオフィス業務のDXに成功している会社に共通の特徴はありますか。

黒﨑:当たり前のことを言うようですが、「現場への説明をバックオフィスの人たちが丁寧に行っている」ところほど、うまくいっていると感じます。逆にうまくいっていない企業は、メールやSlackなどでツールの導入を一斉アナウンスするだけで、「あとはマニュアルを見て慣れてね」という対応になってしまっていることが多い印象です。
井無田:黒﨑さんがおっしゃっているのは、DXの推進でつまずきやすいポイントでもあるかもしれないですね。「プロダクトを選定さえすれば、後は勝手に浸透していく」と思ってしまう。オンボーディング(定着支援)がおろそかになっているケースや、そもそも現場から共感が得られる運用になっておらず活用されないことが起きがち、ということでしょうか。
黒﨑:そうですね。さまざまな企業の事例を見ていて特に重要だと思うのは、“共感”です。たとえば、当社で支援したある大手企業では、バックオフィスの担当者が全国各地の支店を行脚し、丁寧に説明してまわっているんです。夜は支店の人たちと飲みに行き、カラオケにも行って仲良くなる。そうやって信頼関係を築きながら、「あの人が言うのであれば、うちの支店でもツールを使ってみよう、運用を変えてみよう」と共感の輪を広げているんです。
井無田:結構泥臭いのですね。ただ、一般的なイメージとして、バックオフィス部門の人たちは、そうしたアプローチが苦手な印象もあります。実践している企業はどのような工夫をしていますか。
黒﨑:現場との橋渡し役として、現場経験者をバックオフィスに登用し、DX推進のリーダーに任命するケースもあります。学生時代にカラオケや飲食店でアルバイトをしていたような、場づくりやコミュニケーションが得意な人にプロジェクトへ参加してもらい、全国行脚してもらったという話も聞きました。もちろん、どこまでやるかは会社のカラーによるとは思いますが、いずれにしろ成功企業は「DXを楽しく進める」という意識が強い点は共通していると、私は感じます。
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井無田 仲(イムタ ナカ)
テックタッチ株式会社 代表取締役慶應義塾大学法学部、コロンビア大学MBA卒
2003年から2011年までドイツ証券、新生銀行にて企業の資金調達/M&A助言業務に従事後、ユナイテッド社で事業責任者、米国子会社代表などを歴任し大規模サービスの開発・グロースなどを手がける。「ITリテラシーがいらなくなる...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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中釜 由起子(ナカガマ ユキコ)
テックタッチ株式会社 Head of PR中央大学法学部卒。2005年から2019年まで朝日新聞社で記者・新規事業担当、「telling,」創刊編集長などを務める。株式会社ジーニーで広報・ブランディング・マーケティング等の責任者を経て2023年にテックタッチへ。日本のDX推進をアシストするシステム利...
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