知識ゼロでも笑えるのは「頭脳王」と同じロジック?
──私はセキュリティも開発も自分ではやったことがないのですが、なぜか笑えるんです。どうしてなんでしょう。
R-1グランプリでは、一般のお客さんの前で「Adversarial Attack(アドバーサリアル・アタック)か!」という誰も分からないネタをやって、「すみません、今のは総務省向けのネタでした」と解説するボケをやりました。
一方で、セキュリティガチ勢向けのマニアックなネタをYouTubeにアップすると、なぜか広い層に見てもらえるんです。おそらく、クイズ番組の「頭脳王」と同じです。視聴者は全然答えが分からないのに、プレイヤーが意味不明なスピードで解いていくのをただ眺める。そういう楽しみ方ができているんじゃないかと。
──「【脆弱王】史上最強の情報セキュリティ王者決定戦」なんかはまさにそうですね。
技術系イベントはネタの宝庫 スマホには大量のツッコミメモ
──ネタは、自分で考えているのですか?
ほとんどそうですね。技術系イベントや懇親会でのおもしろいくだりは、iPhoneのメモ帳に残しています。(iPhoneをスクロールしながら)一番新しいメモには「Duolingoに機械語ないだろ」というツッコミが書いてありますね。
──ふとした一言からネタを作っていくんですね。
そうですね。最初に思いつくのは、一言やワンシーンが多くて。たとえば「背脂++」って書いて背脂マシマシとか、「背脂#」で背脂マシマシマシマシとか。そこから広げられそうなものを見つけて、フリップネタや漫才にしています。他にも「愛犬の名前をパスワードにしたら、愛犬の名前を忘れてしまいました」とメモしてありますね。愛犬の名前が英数字記号8文字以上くらい複雑なのか、普通に忘れっぽい人なのか、どちらなのでしょうね(笑)。
──難産だったネタはありますか?
最近だと、「マルウェア育成ゲーム」ですね。実際にUnityでゲームを作りながらネタにしたのですが、この路線でいこうと思いついたのが披露する3日前で、本当にギリギリでした。最後は徹夜。でも楽しいです。自分にしかできないものを作りたいと思いながらやってます。
──アスースン・オンラインさんは、「僕のネタが笑えないのは、聴く人のリテラシーが足りないか、自分のお笑いスキルが足りないかのどちらかだ」という説を唱えていらっしゃいますね。実は以前、アスースン・オンラインさんのネタをみんなで見たときに、一人だけ全然笑えなかった方がいたんです。その方は総務なのに「他にいないから」という理由で情シスもセキュリティもやっていて「とっつきやすいお笑いから」と思って参加されたとのこと。でも、ネタについていけなくて、周りがなぜ笑っているのか分からなかったそうなんです。それで「自分一人でセキュリティは無理だ」と気づいて、ちゃんとベンダーやコンサルタントに相談しようと決めたそうです。
すごく良い意見じゃないですか。笑えなかったとしても、そういう役立ち方があるんですね(笑)
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酒井 真弓(サカイ マユミ)
ノンフィクションライター。アイティメディア(株)で情報システム部を経て、エンタープライズIT領域において年間60ほどのイベントを企画。2018年、フリーに転向。現在は記者、広報、イベント企画、マネージャーとして、行政から民間まで幅広く記事執筆、企画運営に奔走している。日本初となるGoogle C...
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