「ただの情シス」脱却へ NRI ITリーダーが示す、社内外共創をかなえるデジタルワークプレイスの未来
導入したSaaSを“真の意味”で使いこなしてもらうためのアプローチ

野村総合研究所(以下、NRI)では、コロナ禍でリモートワークが普及する前から、テクノロジーを活用して従業員の働く環境を改善していく「デジタルワークプレイス」に注力してきた。昨今では、これを進化させる形で、ゼロトラストセキュリティを実装した基盤にデジタル資産や人的資本データを最大限活用するためのプラットフォームとして「共創ワークスペース」を構築している。この取り組みを率いる野村総合研究所 IT戦略部長 村田龍俊氏は、NRIで長きにわたり共創ワークスペースを含む多くのITプロジェクトのリーダーを務めてきた人物だ。同氏に共創ワークスペース構築の経緯や具体的なステップ、またプロジェクトをスムーズに進行するために工夫していることなどを聞いた。
コロナ以前からデジタル前提の働く環境を整備
現在と比べたらかつてのビジネスはとても閉鎖的だった。昔も今も「企業内秘密」は存在するものの、かつてはビジネスのアイデア、関与するメンバー、プロダクトの開発や製造など、ほとんどが企業内で閉じていた。パートナー企業やベンダーなど社外とつながりを持つにしても、1対1で線のつながりが多かったといえる。
しかし今はどうだろう。複数の組織やメンバーと有機的につながり、互いに定期的なコミュニケーションをとって情報を共有し、より良い結果につなげている。こうしたオープンなコミュニケーションを組織に浸透させるためには、文化的・組織的な変革と同時に技術的なデジタルプラットフォームも必要となる。リモートワークが浸透した現代であれば、そのプラットフォームには機能性や生産性を備え、セキュアであることが求められるだろう。
このような観点から、NRIは「共創ワークスペース」と呼ばれるプラットフォームを構築し、運用している。これはテクノロジーを駆使して従業員の働く環境をより良いものにしていくためのプラットフォームだ。この概念は突然生まれたものではなく、2015~2016年頃から同社の中で実現に向けて着々と取り組みが進んでいたという。呼称こそ「IPコミュニケーション」「スマートコミュニケーション」「デジタルワークプレイス」と移り変わりつつも、デジタルの力を加えて働く環境を整えていこうという発想のもと、今も進化を続けている。
この共創ワークスペース構築の舵を取るのが、同社 IT戦略部長を務める村田龍俊氏だ。同氏は、証券会社向けオンライントレードのシステム基盤でデータベース周辺のバックエンドを担当するところからNRIでのキャリアをスタートさせ、徐々にWebサーバーやフロントエンドにも守備範囲を広げてきた。前の部署ではデジタルワークプレイスと呼ばれるオフィス環境の整備にも携わっていたという。当初は顧客向けのオフィス環境を担当していたが、社内向け環境へと担当が移ったことでアプリケーションも担当するようになり、2024年4月から現職に至る。

なお同社のIT戦略部は、いわゆる情報システム部の業務領域を担当している。ITインフラ環境の企画や導入を主導し、直近ではAI活用などの推進も担う。
現在の共創ワークスペースの気運を大きく高めるきっかけとなったのが、やはりコロナ禍によるテレワークの普及だ。働く場所が社内に限らなくなり、業務ができる場所を広げざるをえなくなった。デジタルツールを駆使して、より良いワークスペースを作っていこうという共創ワークスペースの考え方がより重要視されるようになったという。
では実際、どのような過程を経て共創ワークスペースを構築してきたのか。村田氏はここまで歩んできた4つのステップを紹介する。
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加山 恵美(カヤマ エミ)
EnterpriseZine/Security Online キュレーターフリーランスライター。茨城大学理学部卒。金融機関のシステム子会社でシステムエンジニアを経験した後にIT系のライターとして独立。エンジニア視点で記事を提供していきたい。EnterpriseZine/DB Online の取材・記事も担当しています。Webサイト:https://emiekayama.net
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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