AI時代のデータ活用はどこまでOK?個人情報保護委員会/デジタル庁の視点から学ぶ、企業が今すべきこと
「Data & AI Conference Trust2025」レポート Vol.1
データ活用の主役は民間企業、我々が実施すべきことは?
竹之内:石井さんは以前、個人情報保護委員会の国際担当でもありました。今後は、越境した個人データに関して企業が一定の保護要件を満たしていることを国際的に認証する「越境プライバシールール(Cross-Border Privacy Rules:CBPR)」などとも結びついた、データの国際連携が期待できるのでしょうか。
石井:CBPRは過去7年ほど推進していたのですが、私の理解する限り、日本企業で認証を取得されているのはまだ4社しかありません。より多くの企業に取得していただきたいですが、今取得しても企業が直接的なメリットを見出しづらいのが現状です。
2025年6月2日には、APECから「グローバルCBPR」という新しい企業認証の仕組みが移管されました。これは、一定の個人情報保護要件を満たしている企業であることを、第三者である認証機関から認証されるという仕組みです。認証を受けると、その企業は個人情報保護要件を満たした「信頼できる企業」だと対外的に表明できます。今まではAPEC域内だけで適用されていましたが、今後はイギリスやインド、ブラジルといった国々にも広げられればと考えているはずです。
また、データ移転に関しては、移転先の政府が自由にデータを吸い上げてしまう「ガバメントアクセス」という問題がありますが、グローバルCBPRではこの問題にも取り組んでいるはずです。この問題を払拭できれば、グローバルCBPRの参加国・地域の間では安心してデータを流通させられる環境が実現すると思います。
竹之内:ありがとうございます。ガバメントアクセスについては、「政府の要求によって合法的にデータにアクセスすること」と理解していますが、そこを避けたい企業もいると思います。Acompanyは、その問題に対してセキュリティ技術、特にPETsの一種である秘密計算の技術で支援できればと考えています。
2つ目のテーマに移ります。データ活用は今後、国内海外含めさらに盛んになると思いますが、我々はどのようなアプローチを取るべきでしょうか。民間企業の方々に期待していることなどがあれば教えてください。
小川:今後は「データドリブンエコノミー」な世界に変化していくと指摘される中で、各企業において適正なデータの利活用を進めていただければと思います。そのためには、データガバナンスのための体制整備、人材育成、リスクベースに基づく取り組みが必要ですが、これを単なるコストではなく“データ活用を進めるための投資”と位置づけていただけたら幸いです。
現在、政府もデータ活用の推進と、個人の権利利益を守るための個人情報保護法のアップデートの検討を進めているところです。その過程において、「適切なガバナンスとは何か」というテーマについても、様々な討議や議論が進んでいくと予想されます。ぜひ、ガバナンス構築における皆さんのベストプラクティスや有効な技術のご提案なども共有いただきたいです。
石井:繰り返しになりますが、今後のデジタル経済をデータ活用なしで渡り歩くことはできません。ぜひ、ガバナンスを整えた上で、適切なデータ活用を恐れずに実行していただきたい。その際にもし課題に直面したら、我々にお声がけいただければ、サポートいたします。声の届け方にはいろいろな方法があります。直接政府に伝えるでも良し、先ほど紹介したDFFT Expert Communityのメンバーなどを通して伝えるでも良し。とにかく自分事としてデータを活用しつつ、今の課題を解決していただければと思います。データ活用においては、民間企業の皆さんが主役です。皆さんのこれからの活躍に、期待しています。
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京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)
ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail : k...
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