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【IVS2025】塩崎氏ら国会議員と弁護士が提言/AI・web3規制は制約ではなく事業機会

IVS2025レポート#01

 国内最大級のスタートアップカンファレンス「IVS2025」が7月2〜4日、京都市勧業館「みやこめっせ」で開催された。本記事は、DAY1で行われた「日本のテックイノベーション政策最前線 ~AI・web3規制の現在地と事業機会~」の内容を紹介する。このセッションでは、日本のテクノロジー政策が世界をリードしていることが明らかになった。web3分野では日本が先駆けて制定した法制度が海外で参照され、AI分野では日本発の国際的な政策枠組みが先行している。国会議員と弁護士陣が、規制対応を事業成長の機会に転換するための視点を示した。

塩崎彰久氏(衆議院議員・自由民主党) 川崎ひでと氏(衆議院議員・自由民主党、総務大臣政務官) 河合健氏(アンダーソン・毛利・友常法律事務所 パートナー弁護士) 殿村桂司氏(長島・大野・常松法律事務所 パートナー弁護士) 増田雅史氏(森・濱田松本法律事務所 パートナー弁護士) モデレーター:松倉怜氏(株式会社AVILEN CEO)
(左上より)塩崎彰久氏(衆議院議員・自由民主党) 川崎ひでと氏(衆議院議員・自由民主党、総務大臣政務官) 河合健氏(アンダーソン・毛利・友常法律事務所 パートナー弁護士) 殿村桂司氏(長島・大野・常松法律事務所 パートナー弁護士) 増田雅史氏(森・濱田松本法律事務所 パートナー弁護士) モデレーター:松倉怜氏(株式会社AVILEN CEO)

web3・暗号資産の税制改革で市場成熟化を加速

 衆議院議員の塩崎氏は日本のテクノロジー政策について「世界との差を心配する声もあるが、ルールや制度の面では遅れているどころか、むしろ制度整備は日本の方が進んでいる」と評価する。

 web3・ブロックチェーン分野では、日本が世界初の包括的な規制枠組みを構築した実績がある。日本は最初に資金決済法を導入し、ブロックチェーン・暗号資産のあり方についてルールを定めた。海外は規制を重視せずに進めたことで大きなスキャンダルが発生した。その後、各国が日本のやり方を参考にするようになった。

 総務大臣政務官の川崎氏は、政府の成長戦略の重要性を語った。「AIなどのテクノロジーをしっかり成長させるために、政府も基金を組むなど後押しが重要。2025年の骨太の方針の中でしっかりと折り込んだ」と強調した。

 web3分野では、税制改革への道筋が明確になりつつある。塩崎氏は暗号資産の課税についてこう語った。

 「2年前のIVSで参加者から聞かれたのは、いつになったら暗号資産取引の税金が下がるのかということだった。日本では、暗号資産取引は総合課税で最大55%まで税金がかかり、海外と比べて高い。これを海外並みにキャピタルゲイン課税、最大20%にしようという取り組みを進めているところ」(塩崎氏)

 現在、金融庁で暗号資産(仮想通貨)の規制見直しが進んでいる。規制法を現行の資金決済法から金融商品取引法(金商法)に移行する方向で議論が進められている。

 税金を下げるためには、株式と同じようなキャピタルゲインにしていく必要がある。株式や他の金融資産と同じように、市場に対する説明責任や透明性、インサイダー取引規制といったものをセットで導入していく。投資家保護とセットで進めることが必要不可欠だとも付け加えた。

万博ウォレットはweb3マスアダプションの社会実験

 アンダーソン・毛利・友常法律事務所 パートナー弁護士の河合氏は規制案のポイントについて詳しく解説した。

 「暗号資産については、政府、自民党、金融庁ともに議論を進め、金融商品取引法の枠組みに沿って規制を整備しているところだ。株式とは異なる特性を持つため、その特性を損なわないよう制度設計には十分な配慮が必要。たとえば、発行者が存在し、資金調達を目的とするトークンには、情報開示やインサイダー取引に関するルールを導入することが検討されている。情報開示の形式についても、従来型ではなく、Web上での公開など、暗号資産に適した形を取ることになると思う。ビットコインのように発行者が不在のものについては、こうした規制の対象外となるだろう。国際的な動きに対応しながら、投資家保護の強化と、最終的には20%の分離課税の実現を目指す」(河合氏)

 森・濱田松本法律事務所 パートナー弁護士の増田氏は以下のように語る。

 「目指しているのはマスアダプション、つまり一般の人に今のインターネットやスマートフォンのようにweb3が行き渡ること。そのためには使いやすさと使いたくなる魅力の2つが決定的に重要になり、両者は卵と鶏の関係にあるが、まずはこの1歩を踏み出すための政策的な配慮が必要。補助金や税優遇といった経済的インセンティブ、規制緩和などの工夫により、多くの企業にweb3のエコシステムに参画してもらいたい」(増田氏)

 マスアダプションのための施策の1つがウォレットの活用だ。2025年大阪・関西万博は、web3の大規模な社会実験の場として注目される。塩崎氏は大阪・関西万博でのウォレットの実践の意義を強調した。

 「万博のウォレットは日本で初めての大規模なデジタルウォレットの社会実験。大阪・関西万博を通じて利用者が1,000万人規模に拡大すれば、様々なプラットフォームの間をつないだポイントやトークンが使え、新しいデジタル経済圏を体感できる。IVSの参加者にはダウンロードを強く勧めたい」(塩崎氏)

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AI政策:不安解消によるイノベーション促進

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京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)

ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail : k...

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