大林組、大和ハウス工業、清水建設が語る「BIMから始まる建設DX」と未来戦略
オートデスク 「Design & Make Summit Japan 2025」レポート
木材活用で見えたサステナビリティ実現への新工法戦略とは
稲岡:与えられたツールを使うだけでは結果を出せないし、明確な戦略が必要になりますね。3つ目のテーマ「サステナビリティへのチャレンジ」について伺います。多くの挑戦をしている中、「木(もく)へのチャレンジ」という言葉をよく聞きます。
飯田:木を使うだけでなく、ユニット化や施工の効率化を同時に進めています。設計から施工まで、制作会社との連携で取り組むものです。
稲岡:従来の建設業の生産プロセス、ワークフローで事業を運営してきた結果、今があるわけです。建設業界として何を変えるか。見直しの指針を示すのがMMC(Methods of Construction:現代建設工法)、IC(Industrial Construction:工業化建築)、DfMA(Design for Manufacture and Assembly;製造組立容易性設計)ではないでしょうか。
宮内:欧州では、これらのキーワードがサステナビリティの文脈で語られています。海外で、この話題になった時の周囲の熱量には驚かされました。世界と日本では認識に差があると感じる。日本企業には、単に木の工法を取り入れるのではなく、木でサステナビリティの問題を解決する意思が必要だと感じます。木の工法と他の工法を比較したとき、コストは同じかそれ以上になるかもしれない。それでも木を選ぶ。それは問題解決への意思がないとできないことです。
稲岡:ここに挙げたキーワードの真の価値が、サステナビリティの文脈で理解されていない。
三戸:成長時に木はCO2を吸収するが、ある程度まで成長すると吸収がストップする。成長した木を使うと共に、後のことを考えて植林を行うわけです。国もGXへの補助金事業を通して、サステナビリティの問題解決を奨励している。今は排出量の計測だけでよくても、この先には必ず「削減しろ」となるはずです。木を使うことで、今から対応できるようにしておく。でなければ、設計ができなくなるでしょう。自社の事業継続のため、ライフサイクルアセスメントを考えなくてはならない。

稲岡:寄り道をして、ようやくわかった気がしますね。
飯田:海外ではリーンコンストラクションにも熱心に取り組んでいます。これを「無駄の排除」とすると本質を見誤る可能性がある。価値のないものを省き、価値を追求することがリーンコンストラクションだとすると、ICが目指す姿と同じだと私自身は考えています。人手不足の問題に取り組みつつ、同時に品質を高める。それは価値のある建物を実現することに他ならない。それがリーンコンストラクションの本質だと思います。
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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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