自動車サイバーセキュリティを「3つの視点」で整理 “ITの知見”を自動車にどう持ち込むべきか?
【第4回】SDV時代の自動車サイバー脅威に対抗するための対策と今後の展望
今後のセキュリティの展望
今後のSDVセキュリティは、新しい技術基盤の上で進化すると考えられます。この先登場する新しい技術や既にIT領域で使われている技術など、さまざまなものが自動車にも適用されることになるでしょう。
- AIによる自律防御:通信パターンやシステム挙動を学習し、未知の攻撃をリアルタイムで検知・対応する。AIは大量データからパターンを抽出できるため、人間の監視では気づきにくい異常も検出できる
- ポスト量子暗号:量子コンピューターの進展により従来の暗号が脅かされるため、耐量子暗号技術を導入することで長期的な安全性を確保する
- ゼロトラストアーキテクチャ:車内外の通信、クラウドサービスアクセスにおいて常に検証を行い、信頼を前提としない設計を実現する
- クラウド・エコシステム連携:車両単体だけでなく、クラウドや通信事業者を含めた“全体最適”のセキュリティ設計が求められる

ITセキュリティの知見を積極的に取り込みながら、自動車特有のリアルタイム性、安全性の要件に適応することは、SDV時代における「安全なモビリティ社会」の実現に欠かせません。
SDVは自動車産業に新しい価値を提供すると同時に、従来にはなかったサイバーリスクも顕在化させています。リスクベースの基本姿勢をもって、ライフサイクル全体にわたる多層防御を展開することが出発点です。その上で、IDS/IPSや異常行動分析、セキュアOTAなどの技術的施策、SIRTや人材育成を含む組織体制、業界横断の情報共有と標準化を組み合わせることで、堅牢な防御体制を築くことが可能です。
AIやポスト量子暗号、ゼロトラストなどの新たな潮流を取り込み、IT分野の知見を自動車固有の要件に応用することで、SDV時代の安全かつ持続可能なモビリティ社会の基盤を確立できます。今後は、技術革新と組織戦略の両輪で、より高度なセキュリティ対策を実装することが求められるでしょう。
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原 聖樹(ハラ セイキ)
企業情報システム部門での経験を経て、2001年にトレンドマイクロに入社。プリセールスエンジニアとして、大企業や公共機関を主に担当した後、個人向け製品のPC向け組み込みビジネスの立ち上げや、法人向けマネージドサービスの新規ビジネスにも従事。 2012年からは、制御システム向けセキュリティの立ち上げに取...
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