SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

最新イベントはこちら!

Security Online Day 2025 春の陣(開催予定)

2025年3月18日(火)オンライン開催

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けの講座「EnterpriseZine Academy」や、すべてのITパーソンに向けた「新エバンジェリスト養成講座」などの講座を企画しています。EnterpriseZine編集部ならではの切り口・企画・講師セレクトで、明日を担うIT人材の育成をミッションに展開しております。

お申し込み受付中!

EnterpriseZine(エンタープライズジン)

EnterpriseZine編集部が最旬ITトピックの深層に迫る。ここでしか読めない、エンタープライズITの最新トピックをお届けします。

『EnterpriseZine Press』

2024年秋号(EnterpriseZine Press 2024 Autumn)特集「生成AI時代に考える“真のDX人材育成”──『スキル策定』『実践』2つの観点で紐解く」

栗原潔の2010年クラウド観察記

あなたの会社にクラウドは本当に必要ですか?

第3回

人々が熱い視線を送るクラウドですが、本当に皆さんにも必要なものなのでしょうか? ブームに流されず、自分達との相性を見極めるためのポイントを解説します。

企業はクラウドのどこに価値を求めるべきか

 当たり前過ぎる話だが、企業ユーザーはクラウドが時代の流れであるから活用するのではない。クラウドが自社に価値をもたらしてくれるから採用するのである。基本に立ち返って、クラウドが企業ユーザーにどのような価値を提供してくれるかを冷静に検討することが重要だ。

 特に、従来型の企業内システム(クラウドとの対比で特に「オンプレミス」と呼ばれることが多い)と比較して具体的にどのような違いをもたらしてくれるのかに注目する必要がある。

クラウドはコスト削減の価値を提供するか

 クラウドに関するユーザー調査結果ではコスト面のメリットがクラウドの価値として挙げられることが多い。たとえばAmazon S3のギガバイトあたり月額15セントという従量制料金は確かに安価に思える。

 ピークがはっきりしており、特定の時期(たとえば、年末、新年度開始時)だけにハードウェア・リソースの利用が集中するタイプのアプリケーションにおいては、クラウドの従量制料金は大きなコスト削減効果を提供する。ハードウェアを自社購入した場合と比較して、インフラのコストを100分の1程度に削減できた現実の事例も存在する。

定常的に利用されるアプリをクラウドに載せても無意味?

 しかし、ハードウェア・リソースが定常的に使用されるタイプのアプリケーションではどうだろうか。たとえば、1テラバイトのストレージを常に使用する場合、S3の月額料金は約150ドルとなる(これに加えてアクセス料金とデータ転送料金がかかる)。

 1テラバイトのハードディスクドライブの価格が1万円以下であることを考えれば、クラウドはハードウェアを自分で購入する場合と比較しても圧倒的に安価とは言えないことがわかる。

 もちろん、公平な比較のためには、ドライブ単体の価格ではなく、エンタープライズ・ストレージのハードウェア、およびソフトウェアの価格にストレージの管理コストやネットワークコストを含めて比較しなければならないが、それでもクラウドがオンプレミスと比較して圧倒的に安いとは限らないと言えるだろう。

自家用車とレンタカーを比較するのはナンセンス

 この点はオンプレミスを自家用車に、クラウドをレンタカーにたとえてみれば理解しやすい。車をたまにしか使わないのであれば必要に応じて「利用」するレンタカーが安く、毎日使うのであれば自分で「所有」する自家用車が安いということだ(図1参照)。

図1:それぞれメリット・デメリットがある
それぞれメリット・デメリットがある

 クラウドにすれば必ず安くなるという固定観念にとらわれ、コスト削減だけを目的に導入を選択すると思惑違いとなる可能性がある。当たり前のことだが、まずは、使用するアプリケーションのリソース利用パターンを把握して、ライフサイクルで見たトータル・コストを概算した上でオンプレミスと比較する必要がある。

 なお、コストに関して言えば資産効率性の向上もクラウドの重要なメリットである。今日の企業財務においては同じ金額の支出を行なう場合でも、資産よりも経費を好む傾向がある。税制面でのメリットもあるし企業の経営指標上も有利になるからだ。(次のページに続く

 

次のページ
クラウドは俊敏性・柔軟性上の価値を提供するか

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
栗原潔の2010年クラウド観察記連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

栗原 潔(クリハラ キヨシ)

株式会社テックバイザージェイピー 代表、金沢工業大学虎ノ門大学院客員教授日本アイ・ビー・エム、ガートナージャパンを経て2005年6月より独立。東京大学工学部卒業、米MIT計算機科学科修士課程修了。弁理士、技術士(情報工学)。主な訳書にヘンリー・チェスブロウ『オープンビジネスモデル』、ドン・タプスコッ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

EnterpriseZine(エンタープライズジン)
https://enterprisezine.jp/article/detail/2317 2010/06/01 00:00

Job Board

AD

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング