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AIと自動化で「オペレーターからオーケストレーターへ」──タニウムが描く自律型ITの実像

Tanium「Converge 2025」レポート#3


 複雑化するIT環境とセキュリティ脅威の中、企業は「リアクティブな対応」からの脱却を迫られている。タニウムの年次カンファレンス「Converge 2025」の3日目の基調講演から、「Autonomous IT(自律型IT)」が導く運用の未来と、AI・自動化が実現する「止まらないビジネス」へのロードマップを解説する。

「オペレーターからオーケストレーターへ」:リアルタイムが前提

タニウム プロダクトマネジメント担当シニアVP ランディ・メノン(Randy Menon)氏

 タニウムのプロダクトマネジメント担当シニアVP、ランディ・メノン氏は、変化を駆動する要因として「生産性」「運用の複雑性」「安全性とセキュリティ」を挙げた。コストを抑えつつスピードと規模を上げる要求、積み上がった技術と管理対象の拡大、そして「正しいデータに基づく変更・意思決定」の必要性が同時に迫る、という整理である。

 同社は使命として「リアルタイムインテリジェンスですべてのエンドポイントを保護する」ことを掲げ、キーワードを「Speed/Scale/Safety」に置く。タニウムは数万〜数十万台規模の環境でも、15秒から数十秒で「今の状態」を把握できる設計を特徴とする。インシデント対応で「昨日の時点では大丈夫でした」では説明責任を果たせない。状況を見て即座に次の調査を回せるかが、運用の確度を左右する。

 ここでの主張は、手順の自動化にとどまらず、意図と文脈に適応して成果達成を支援する"エージェンティックなワークフロー"へ移ることで、人は「オペレーター(作業者)」から「オーケストレーター(指揮者)」へ役割転換できる、というものだ。自動化が「決めた手順を繰り返し実行する」局所最適になりがちなのに対し、自律は文脈に応じた判断を含み、より高いレベルで人手を介さない状態を目指す。ただし、その差別化要素はAIの賢さそのものではなく、根拠となる正確なデータと、実行系を安全に回すガードレールにあるという。

発表の3本柱:エンドポイント拡張、AI、運用支援

 今回の発表の3本柱は「エンドポイント拡張」「AIオートメーション」「運用面の強化」だ。

エンドポイント拡張:単一コンソールで広がる管理対象

 「エンドポイントの拡張」では、従来のPC・サーバー中心から、モバイル、ChromeOS、OT(運用技術)、IoT、仮想ワークロードまで管理対象を広げる方針が示された。

 ポイントは、単に対象を増やすのではなく、プラットフォームの中核(自動化、AI、ポリシー、コンプライアンス、テレメトリ等)を広げ「コンソールは一つ、運用ワークフローも一つ」という統一体験を維持する点にある。OTではネイティブプロトコルを使い、ベンダー、機器種別、モデル、シリアル、ファームウェアバージョンなどを把握し、条件によっては更新などの制御にも踏み込む構想が語られた。モバイルについても、IntuneなどのMDMをネイティブにサポートし、単一コンソールの運用体験に統合していく方針だ。

AIオートメーション:Tanium Ask&MCPサーバで「実行」までを支援

 「AIオートメーション」では、自然言語で質問し、分析・コンテキスト・推奨次手を得る「Tanium Ask」が紹介された。自然言語での問い合わせを「クエリ変換」から「対話での深掘り」へ拡張し、可視化だけでなく制御の準備までアシストする。講演では、インサイトの背後に追跡可能性(ソース、推論プロセス、説明可能性)を提供するとしており、単なる要約ではなく"運用判断に耐える根拠"を意識した設計が強調された。ただし設計思想として「最後の実行ボタンは必ず人が押す」ことを前提としている。

Tanium AskとTanium MCPサーバ

 より踏み込んだポイントは、AIを「観察」から「実行」へ移すための仕組みとして提示された「Tanium MCPサーバ(Model Context Protocol Server)」だ。企業が承認したAIアプリケーションとTaniumプラットフォームの間でブローカーとして機能し、可視化、設定、パッチ修復などの機能を「呼び出し可能なアクション」として安全かつ予測可能に公開する、という位置づけである。LLM(大規模言語モデル)やCopilot等が直接の認証情報や低レベル権限を持たずに済む点、ポリシー・ガードレール・監査を集中適用できる点、さらに「どのアクションを・誰に・どの条件で公開するか」を調整できる点が説明された。

運用支援機能:メンテナンスウィンドウとスクリプト実行

 運用面の強化として「Global Platform Maintenance Windows」が言及された。パッチ、デプロイ、プラットフォームアクションを"いつ実行するか"だけでなく、"その時間帯に何が起きているか"まで監視できる設計を目指すという。

 またスクリプト領域では、歴史的に依存してきたVBScript/PowerShell/シェルがエンドポイント依存と制御限界を生む、との問題提起があったうえで、独自スクリプトエンジンと標準ライブラリを組み込み、複数OSにまたがる一貫した実行を提供する構想が示された。記法はPythonライクとされる。

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ゲイツ財団、Vanguard、JLLによる事例

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京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)

ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail : k...

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